第6話:夏実とお留守番の一日

夏休みのある日のこと夏実と秋菜二人でお留守番をすることになった。
「夏実ちゃん、3時過ぎには帰ってくるけどあとはしっかり秋菜ちゃんの面倒、見てね。それとお掃除しっかりやってね」
「わかってるよ」「いってらっしゃい」
そういって春花は出かけた。

 夏実は秋菜ちゃんを洗面所に連れていった。

「これ洗濯機の中に入れて。お姉ちゃんは台所に行くから」
と、言って脱衣かごの中の服を渡した。こないだから洗濯は秋菜ちゃんの仕事になった。
夏実は台所で洗い物をしていた。そこへナナが来た。
「ナナはいいね、ひまで」
「そんなことないよ」
「どこが?」「夏実ちゃんの監視しているから」
「十分ひまじゃない。なんか手伝って」
「残飯整理なんかがいい」「そういうのはダメ」
「何で?」夏実は無視した。
そこへ秋菜ちゃんが戻ってきた。
「お姉ちゃん、終わったよ」「ごくろうさま」

夏実は洗い物を終えてお昼ご飯にカレーを作ろうと思った。
まず、ご飯を炊くことにした。
米をとごうと入れた水が冷たくて気持ちよかった。
春花に教わったやり方で研ぎ、水を入れて炊飯器に入れた
急に夏実はナナのところへ行った。
「どうしたの?そんなにあわてて…」「たいへん。炊飯器が………」

2階に降りた二人。
「ホントだ。スイッチが入らない」驚いた顔のナナ。
「ねえ。不思議でしょ?」夏実は同調を求めた
考えこむ二人。
「壊れてないよね?」
「昨日はちゃんと動いてたよ」
「なんか………、力を奪われたって感じだね」
「何とかしないとね」心配そうに炊飯器を見つめる夏実。
でも、そうすればいいかわからなかったので後回しにすることにした。
「いたっ」ナナが何かを踏んづけた。
「何かのプラグだよ」夏実は拾ってコンセントに差した。
「でも、不思議だね」

今日は天気がよかったのでお布団も干そうと思った。
寝室は2階で干すベランダも2階だったからそれほど大変ではないが…重い。
外に出てみると蒸し暑い空気が流れ込んできた。
「あつい…」
空高く、太陽が力強くかがやいていた。
涼しげな風が吹いてくれば気持ちいいのに。
汗だくになってきた。

夏実は台所に戻って飲んだ、氷の入った水がやけにおいしかった。
その後、カレーに入れる野菜を切り始めた。
でも、泣きだしてしまった。
ナナがどうしたのかと思ってそばに寄ってきた。
「だいじょうぶ?」
「…だいじょうぶじゃない」泣き声だった。
心配そうに見つめるナナ。
泣きながら、それでも懸命に切り続ける夏実。
そんな姿を見たナナは、「根っこを残して切るといいって聞いたことあるけど…」
「…そうなの?」「本当かどうかは知らないけど」
「今度そうする」みじん切りにしたタマネギをボウルに移した。
ジャガイモと、にんじんは一口サイズに切った。

それから数十分後、おなかをすかせたナナがやってきた。
「まだ?」と、不機嫌そうに聞く。
「まってて」ちょっと困った夏実。
「ご飯にみそ汁かけただけでもいいから」
「あれっておいしくないよ。人が食べるものじゃないって」
「だから食べたいのに」ちょっとわがままそうに言う。
ちょっと間をあけて、「たくわんでも食べる?」
「なぜたくわん?」と、言っているうちに差し出された。
「厚さがバラバラだね」
「だって包丁って切れそうで怖いんだもん」
「切れなかったら包丁じゃないって」
そんなやりとりをすること数十分。
できたカレーをなぜかいつの間にか炊けていたご飯にかけて食べた。
甘口で野菜の大きさがバラバラだったがおいしかった。

夏実が洗い物をしていると何かに気づいた。
廊下に出てみると、ものすごい、泡だらけだった。

「秋菜ちゃん、洗剤何杯入れた?」「3つ」
「…秋菜ちゃん、洗剤はいっぱい入れなくていいの、一杯でいいの。わかった?」
「うん」
でも、この泡を片づけなきゃいけない。
まずは洗濯機をとめなくては。
夏実は物置から雪かきスコップとゴーグルを持ってきた。
泡をかき出して奥の洗濯機を目指した。
泡の中へ消えていったが、すぐに戻ってきた。
「泡が口の中に入ってきた」泣きそうになりながらも台所でうがいをした。
マスクをして再挑戦。完全防備の夏実は洗濯機のスイッチをとめてきた。
次に泡の片づけ。早く片づけないとお姉ちゃんに怒られる。
おふろ場に捨てる。雪かきみたいだった。
消えない泡。キリがなかった。
魔術を使って消すことに。でも、夏実が使えて、家の中でも使えるもの…。
ものを消す魔術は使えない。小さくすることもできない。
「水をかけたら消えるんじゃない?」「水びたしになるでしょ」
それじゃ、困る。
「風で吹き飛ばさない?」「家の中が散らかるでしょ。それに強すぎたら家が壊れる」
いい方法だと思ったのに。でも、ほかにいい方法がない。
散らかってでも使おうと夏実は思った。
「どうなっても知らないよ」やけになってきた。
ナナが本に戻り、風の魔術を使った。
あたりには強い風が吹き回った。

数分後、春花が帰ってきた。その表情は驚いていた。
春花は夏実を家の中を捜し始めた。

いた。
春花の姿を見た夏実。びっくりしていた。
「きれいになっているね」
帰ってきたことに気づいてなかった夏実。
風の魔術を使ったが散らかさずに済んだ。
逆に、風の通り道が部屋をきれいにしてくれた。
うまく使いこなせた。
ほっとした夏実はすすぎと脱水を終えた洗濯物を干そうとベランダへ。
しかし、下では春花が落ちていた雪かきスコップを見つけてしまった。
干し終わって2階のベランダから外を見つめる。ナナが来た。
「よかったね。バレずに、しかも部屋がきれいになって」
「なんとなくいけると思った」
心地よい風が吹いてきた。夏の暑さを忘れそう。
そこに春花がスコップを持って、「夏実ちゃん。これ、なに?」
スコップ、片づけるの忘れてた。
そこにシャボン玉が飛んできた。びっくりする夏実。
ばれていると思った夏実。「あのね、それはね」と、動揺する。
春花が何かを言おうとした瞬間、夏実は目をつぶった。
また、すぐ怒る。夏実はそう思った。
「何して遊んだか知らないけど、使い終わったら片づけてね」と、優しく言って夏実にスコップを渡して、下に降りていった。
堅くなっている夏実。スコップを握りしめたまま動かなかった。
ナナがそばに寄ってみると、夏実の早い鼓動が聞こえてきた。
怒られると思っていたのか泣きそうな表情だった。
下の庭では秋菜がシャボン玉で遊んでいた。