Last Kitten Heart特別企画 SNOWY

 snowy —— 雪のような

 この街にもそれは降ってきた。

 

「雪だ」外に出るとあたりは真っ白だった。
「ゆきー。雪、雪、雪、雪、雪、雪、雪、ゆきー」
 まるで小さな子供のようにはしゃぐ。喜びに満ちて笑みがこぼれる。
 雪を両手でつかみ取り、ほっぺたに当てた。
「つめたーい」
 朝七時。人通りは少ない。
「そうだ雪ウサギ作ろう」
 鼻歌交じりにあたりの雪を丸めだした。
「ランララン、ランララン、ランララン……」
 ふと、鼻歌が止まり我に返る。
「私、何やっているんだろう。雪で喜ぶ歳でもないのに……」

 家の中に入る。今年もクリスマスは一人。強がっているつもりはないけど、寂しくはない。
 そこへ電話が鳴る。すぐに出ようと思ったが、ヒマだと思われたくなかったのであと三回鳴ってから出た。
「はい、もしもし。……間違いです!!」
 電話を切ったとき、空しさだけが残った。

 —— 別に寂しくなんかない

 外へ買い物へ行く。冷たい北風が身にしみる。
 街の木には飾り付けやイルミネーションが施されていた。
 少し切ない。
 街の一角で機械仕掛けのサンタクロースが歌い踊っている。
「くすっ」と笑え、気持ちが和んだ。でも……
 表情が変わらないことに怖く思えた。
 切ない気持ちがなくなってしまったように思えたが、一瞬のうちだった。
「……切ない」

 —— 別に寂しくなんかない

 家に帰る。キッチンに買ってきたものをテーブルに置く。
 気分を変えようとラジオのスイッチを入れる。
 すると好きな感じの音楽が流れてきた。すごく落ち着く。
 外の雪景色を見ながら紅茶を飲む。
『一人もいいかな』と感じて開き直れた気がした。
 曲が変わりクリスマスソングが流れてきた。
 急に寂しくなってきた。

 —— 別に寂しくなんか……

「別にね、私は寂しくなんかないよ。一人が好きだからそうしているだけだよ」
 と、クマのぬいぐるみに話しかける。
 余計寂しさが増してきた。
『きゅっ』とぬいぐるみを抱きしめる。
 ためらったが自分の気持ちをこのぬいぐるみだけに素直に言えそうになった。
「本当は寂しいよ」
 なぜかバカバカしく感じなかったので続けて話した。
「あなたみたいな人と一緒に食事ができたらいいよね」
 強くぬいぐるみを抱きしめる。ちょっと眠い。

 ついうたた寝をしてしまった。
 気がつくと自分の部屋じゃない、違うどこかにいた。
『きょとん』としながらもあたりを見渡す。
「お待ちしていました」と、声をかけられる。
 振り向くとあのぬいぐるみがいた。
 しかし、身長が全然違うし、紳士服を着ている。
 そういえば自分はドレスを着ている。
 手をさしのべられたので、手を握りしめた立ち上がる。
「行きましょう」
「どこへ行くの?」と、聞いたが返答がなく、手をつないだまま奥へとつれられる。

 しばらく歩くと戸の前で止まり、開けて中へと通される。
 そこには豪華な食事がテーブルに並んでいた。
 ボーと立ちつくしていると、
「こちらへどうぞ」
 と、イスを引いて待っていた。
 木製のおしゃれなイスに座る。少し大きなテーブルの向こうに彼は座った。
「このごちそう、もしかして……」遠慮がちに聞いてみた。
「もちろん、あなたのために」
 テーブルを挟んで言葉を交わす。
 嬉しくなったがどうこの気持ちを伝えたらいいのかわからなかった。つい黙ってしまった。
「遠慮せずにどうぞ」と、笑顔で話す。
「あ、はい」慣れない服装に、見たことのない料理。緊張してきた。
 自分のために用意してくれた料理。食べてみることにした。
「おいしい」思わず口に出してしまった。
「それはよかった」と、明るい口調で返してくれた。
「どうしてこんなことを?」
「それはもちろん、大好きなあなたのために……」
 それを聞いてますます嬉しくなった。
「もしかして、もしかして、これって……」

「……夢か」
 目が覚めるとベットの中だった。
 枕の横にはあのぬいぐるみがいた。
 そっと抱きしめて、ベットから出る。
 窓の外を見つめる。東の空から日が出ていた。
「あっ、とけてる」
 昨日作った雪ウサギがとけだしていた。

 —— 雪は最後にはとけてしまう

 すごく寂しい気持ちになってきた。
 ぬいぐるみを抱きしめて、
「でも、ありがとう」
 と、つぶやいた。