Last Kitten Heart biscuit

夏実:森の中に入ったのはいいけど………。

陽介:迷っちゃったみたいだね。

夏実:…どうしよう。

陽介:道しるべにまいたパン、ハトに食べられちゃったね。

夏実:おなかすいたね。

陽介:困ったね。

夏実:あれ、なんだろう。

陽介:あの奥の明かり?

夏実:いってみよう。


夏実:きれいなおうちだね。

陽介:外壁がビスケットみたい。

夏実:敷石が飴みたい。

由樹:食べちゃダメだよ。

陽介:だれ?

由樹:私は由樹。この家に住んでいるの。

夏実:食べられるんだ、これ。

由樹:食べちゃダメなの!

夏実:なんで?

由樹:ご、ご、合成着色料とか使ってるし。

夏実:ちゃくしゃくりょう?

由樹:だ、だから食べちゃダメなの。

夏実:おもしろくない。

由樹:つまらなくていいの。

陽介:なんかおもしろいこと言って。

由樹:「隣の家、塀を作ったんだって」「へぇー」

陽介:ベタすぎてつまらない。

夏実:そうだよね。

由樹:すぐに言えるか。

陽介:それであの塀に塗ってあるペンキ、チョコレート?

由樹:そうだよ。

陽介:なめていい?

由樹:ダメだって。

陽介:なんで?

由樹:原材料がおかかだから…。

陽介:それじゃあ、しょうがないね。

由樹:せっかくだから、中に入ってゆっくりしていってください。


夏実:この子猫カワイイ。

由樹:ナナっていうの。

ナナ:にゃあー。

由樹:紅茶おいしい?

陽介:うん。柑橘系のいいにおいだね。

由樹:アールグレイっていうの。

夏実:そうなんだ。

由樹:チョコと子猫と由樹だけに。

陽介:意味わかんない。

由樹:わかってよ!

留恵:うるさいな。寝てたのに。

由樹:お姉ちゃん。お客さん。

留恵:あっ、久しぶりのごち…

由樹:あー。そうだ!紅茶のお代わりいります?

夏実:うん。する。

由樹:こっちはお姉ちゃんの留恵です。

留恵:留恵です。今日はお忙しいところお越しなりましてホントにホントにありがとうございます。マジで!!

由樹:久しぶりのお客さんでお姉ちゃんは大歓迎しています。

留恵:由樹はね、数年前頭打っちゃって変な子になってしまった弟です。

陽介:男だったの?!

夏実:かわいいオレンジのワンピース着ているのに。

由樹:ちっがーう。もう、お姉ちゃんったら、冗談が好きなんだから。

留恵:由樹ちゃんったら、虚言癖がでてるよ。

陽介:どっちがホントなの。

留恵:………四枚目?

由樹:四枚目とか言うな!そもそも違うんだらいっしょにしない。

夏実:どっちなの?

留恵:女の子でもないんだよ。

由樹:そういう風に生まれちゃってね。

留恵:妹でもないと。

夏実:そうなんだ。

留恵:そうだ!外も暗くなってきたことだし、泊まっていかない?

陽介:いいんですか?

留恵:全然大丈夫ですよ。迷惑でもないし。泊まってくれるとありがたいくらいです!

夏実:暗くなってからだと危ないね。

陽介:そうしようか。

留恵:そうしてください。


由樹:お姉ちゃん、二人とも寝たよ。

留恵:そう、よかったね。

由樹:そんな大きな鍋で何作ってるの?

留恵:ダシ取っているの。

由樹:何で?

留恵:牛骨。

由樹:『びーえすいー』とかだいじょうぶだよね。

留恵:何?『びーえすいー』って。

由樹:とにかくやめて。

留恵:じゃあ、鶏ガラにしようか。

由樹:それもどうなんだろう…。

留恵:うーん。冷蔵庫いって探してくる。