Last Kitten Heart precious

夏実:ここ………みたいだね。

陽介:そうみたいだね。

留恵:さあ!行くよ。

ナナ:ホントに行くんだ。

留恵:それしか帰る方法ないんだから。

陽介:あの妖精の言うこと信じるわけ?

留恵:少なくともこの国から出るにはあそこみたいだね。

夏実:どうして。

留恵:ほら、看板が出ているでしょ。

陽介:ホントだ。“出国手続きはこちら”だって。

夏実:由樹ちゃんがここにいるんだね。

留恵:たぶんね。この会社の建物のどこかに。

ナナ:この“中央政府ホールディングス”って会社だよね。

陽介:あんまり関わらないようにしようね。

留恵:高い税金取られちゃうしね。早く行こう。

夏実:大丈夫かな?

留恵:こっちにはハッピー☆マッシュルームがあるんだし。

陽介:それが不安なんだよね。

留恵:見たでしょ!あのキノコの威力を。

ナナ:確かに凄かったけどね。

留恵:きっと私たちにもハッピーを授けてくれるよ。

陽介:だと、いいけど。


社長:やっぱり世の中“金”が全てだね。

秘書:また…札束数えて…。

社長:それで、用件は。

秘書:先ほど捕まえた未納税者、どうしましょう。

社長:例の入国者か。国内滞在税と逃亡未遂税、引き出せ。

秘書:かしこまりました。

社長:あと、館内での呼吸税も。

秘書:そのようにしておきます。

社長:それと、逃げた他のヤツらも捕まえおけ。そして、逃亡税など取れ。


留恵:どうにか中には入れたね。

夏実:なんか、いいにおいがする。

ナナ:ホントだ。

陽介:あっちのほうからみたいだけどね。

留恵:ワナって事もあるから気をつけた方がいいよ。

陽介:気づかれたら大変だからね。

ナナ:ちょっと見てくる。

留恵:そうだね。お願い。

陽介:さすがに猫からは税金取らないでしょ。

留恵:でも、動物飼育税とか請求してくるんじゃない?

陽介:そうなったら『野良です』って言おうね。

留恵:そしたら今度は野良猫放置税とか言うんじゃない?

陽介:だからって15才未満には請求しないでしょ。

留恵:消費税だって取られるくらいだよ。するでしょ。

陽介:何でもありって感じがするよね。

夏実:ねえ、息吸っただけで税金取らないよね。

留恵:十分あり得る。

夏実:あ、帰ってきた。

留恵:どうだった?

ナナ:食堂があるみたい。あと、人は誰もいないみたい。

留恵:ちょっと見てみる?何か使えるものがないか。

陽介:でも、息吸っただけで税金取るかな…。

ナナ:え?何の話?

留恵:呼吸税があるかどうか。

ナナ:生存権無視?!

夏実:そうだよね。

留恵:富裕税みたいに限定的に取るんじゃない?

陽介:だったら、取るとしたら罪人とか?

夏実:じゃあ、由樹ちゃんとか危ないんじゃ…。

留恵:早く助けてあげないとね。

ナナ:ほら、ここだよ。

留恵:社員食堂みたいだね。

陽介:うわっ。すごい安い!

夏実:本当だ。安すぎる。

ナナ:なんでこんなに安いんだろう。

留恵:たぶんここの社員は私たちの世界でいう国会議員みたいなものでしょ。

ナナ:そうらしいね。

留恵:自分たちは消費税が高い外で食べずに、ここで食べているだよ。

陽介:消費税80%だから元値が安ければ、高くはならないからね。

ナナ:じゃあ、タダ同然でこの食堂出しているわけ?

留恵:だから、電車タダで乗り放題もできるの。

夏実:そうなんだ。

留恵:でも、いいこと考えた。あれの出番です。

ナナ:あれって?

留恵:ハッピー☆マッシュルーム。

陽介:使うの!

留恵:ここでみんな食事取っているわけでしょ。食事に混ぜたら、みんなキノコの効力にかかるってわけ。

ナナ:うまくいくかな。

留恵:させるの。まず、ナナちゃんが食堂の入り口で見張り。

ナナ:それで他は?

留恵:夏実ちゃんがキノコを入れて、万が一誰が来たら二人でくい止める。

夏実:う、うん…。

留恵:大丈夫だって。ちゃんと守ってあげる。

陽介:危険な目に遭わないようにがんばるからさ。

夏実:うん…。

ナナ:平気?

夏実:包丁で指を切らないか心配で…。

ナナ:そっちかい。

留恵:手でちぎって入れてもいいから。


夏実:あー。びっくりした。

留恵:キノコ投入には成功したからいいんじゃない。

陽介:確か、夏実ちゃんが入れ終わって、外に出ようとしたあと…

ナナ:見つかって逃げ回ったんだよね。

留恵:キノコ入れたことがバレてなければいいけど。

夏実:これからどうするの?

留恵:ココで様子をうかがおう。キノコが効いているか見ないとね。

ナナ:そういえばココどこ?

留恵:ココ?物置みたいだね。

陽介:いろいろゴチャゴチャ置いてあると思ったら。

留恵:この山積みの中に使えるものとかないかな?

ナナ:ちょっと待ってね、見てみる。

夏実:いたい。

ナナ:夏実ちゃんゴメン。

夏実:ううん。大丈夫。

留恵:こういうのはいつも由樹ちゃんが当たるから。

陽介:運がないから?

留恵:実際そうでしょ。狙っても仕組んでもいないのに当たるんだよ。奇跡だよ。

陽介:でも、何が落ちてきたの?

夏実:洗面器。

留恵:一応とっておこう。

陽介:なんで?

留恵:ナナちゃん、あんまり奥に行かないで。私たちだと助けに行けないから。

ナナ:分かった。

留恵:私たちはココで様子見しよう。


夏実:かなり時間が経ったね。

留恵:3、4時間ってところかな。

夏実:まだ行かないの?

留恵:偶然、物置の入口前での会話の内容から由樹ちゃんの居場所も大体分かたし。

ナナ:盗み聞きしたことになるけどね。

陽介:それで、行くの?

留恵:キノコの効力も雰囲気からすると効いてきたみたいだし、行くか!

夏実:大丈夫そう?

ナナ:大丈夫なことは大丈夫だよ。

陽介:やっと外に出られた。

夏実:でも、みんな笑い転げているよ。

留恵:ハッピー☆マッシュルームのおかげだね。由樹ちゃんのところへ行こう。

陽介:あの妖精が『食べると必ず幸せになれる』って言ってたよね。

ナナ:三日三晩休むことなく笑い続けて、笑うのを無理に止めるとキノコの副作用で死に至る。

留恵:それだけ笑い続けたら幸せな気持ちになるだろうね。

夏実:その前に呼吸困難になりそうだよね。

陽介:やっぱりそれ笑いダケという名の毒キノコだよ。

ナナ:笑うことが唯一の解毒方法だもん。

留恵:毒キノコなのかな。でも、私たちが食べなくて良かったね。

陽介:当たり前だよ。

ナナ:だけど、こっちが笑われているみたいでなんか不愉快。

留恵:それは我慢しよう。


夏実:ついに来たね。

留恵:これで由樹ちゃんを助けて元の世界に帰ろうね。

ナナ:ずいぶん立派なドアだね。

留恵:意外と優遇されているんじゃないの?

陽介:そんなわけないでしょ。

ナナ:どっちにしろ連れ戻さないと。

留恵:みんな行くよ!

陽介:うん。

夏実:由樹ちゃん!

留恵:さあ、助けに来てあげたよ。

社長:はは、おもしろいヤツが来た。

夏実:あれ?