Last Kitten Heart friends

 人は傷つけ合わなければ、生きられないのだろうか。
 傷つけ傷つけられ、痛みを抱えながら泣き叫び、救いの手をさしのべるがどこか傷つけている。
 でも、それは違うと信じたい。

 春の訪れを告げる菜の花が、地平線の向こうまで続く景色。
 何の混じりけのない純粋に咲く黄色い花。
 この畑の中をみんなで明るく笑い合いながら走り駆けられたなら、どんなにいいだろう。
 私は、最後までそうなることを願っていた。

 

 ***   ***

 

「ギブ! ギブアップ」
 由樹の身を引き裂かれるような声が室内を駆けめぐる。
「もう、男の子がそんな声、出さないの!」
 留恵は由樹にしていた四の字固めを解く。
「だって……」
 痛めた足を押さえる。
 陽介は勝ち誇った留恵の右腕をつかんで高く上げる。そして、陽介から勝者の名が出ると、笑顔で応えた。
 外は小さな雲が散っている晴れ模様。その天気に負けないくらいの笑顔だった。

 留恵は見た目ボーイッシュって訳ではなく、スタイルのいい女の子って感じだった。しかし、血の気があり、よく由樹にからむ。
 昨日は十メートル助走してからの跳び蹴りで、留恵はすごい満足げな顔をしていたが、留恵とは四つ下の由樹にしてみればしてみれば、ひどいものだった。
 だが、決して留恵は由樹を嫌っている訳ではない。

「留恵ちゃんとは、一緒にいたくない!」
 怒号と共に由樹は立ち上がり、外に出ようとする。
 留恵は由樹の左手首をつかみ、
「ごめん、ごめん。今度は手加減してあげるから……」
 由樹は留恵の手を払い、にらみつけた。
「留恵ちゃんのそばにいたら、身がもたない!」
 そして、外へのドアに近づく。

 由樹は女々しいというか……ナヨナヨしているというべきか。そんな所が留恵にしてみれば、同じ年下でも陽介より由樹の方が絡みやすいのだろう。接しやすいからかもしれない。
 陽介は、由樹とは逆で普通の男の子って感じだから、留恵が絡まない理由の一つなのだろうか。

 由樹がドアノブを回し外に出ようとすると、由樹の足元の方から黒い物体が由樹の顔めがけて跳びかかってきた。
 自分の顔にへばりついたものを由樹は必死で取り除こうとするが、目をふさがれていて辺りがよく見えない。
 振り落とそうと暴れてみたが、つまずいてしまい床にもへばりついてしまった。
 その衝撃に驚いた黒い物体は陽介の方へ逃げた。
 すぐさま、陽介はその物体を抱き上げた。
 由樹は頭部を抱えながら立ち上がり、黒い物体に対して、
「なにしてくれるのさ!」
「思いがけない出会い」
 黒い物体は淡々と答えて、そっぽを向く。
「もうすぐみんな集まるわけだし、ナナも引き留めたかったんだよ」
 陽介が割って話す。
 ナナは黒い毛の子猫で、ペットではなく大切な仲間の一人とみんな思っていてくれている。

 もういいと由樹は立ち去ろうとする。
 留恵は、なお引き留めようとする。
「ここから出たいんだから、そっとしておいて」
「由樹ちゃんさ、ここ由樹ちゃんひとりの家でしょ」
 そうだけどさ、って言いたい顔をする。
「じゃあ、今度は外で遊ぼうか」
 留恵の言葉に、由樹はため息をつく。