Last Kitten Heart friends

 動き回って流れ出る汗を拭う留恵。キッチンで煮えたる鍋の中のように、体が熱く感じる。しかし、視線は待ちかまえる二人へ向いていた。どうやってかわすか、見定めていた。
 スキをうかがっていると先に左にいるの方が動いてきた。留恵はつかもうとする手をすり抜け前へと進む。
 今がチャンスとばかりに右手で弾ませていたボールを持ちかえ投げた。
 そのボールは、もう一人の方の頭上を越えてリングに入った。
「よし! 十二得点目!」
 留恵の叫びの一方で、先に攻撃を仕掛けた由樹が悔しがる。
「何だったら束になってかかってきてもいいよ」
 挑発する。
「じゃあ、一回でも決められたら罰ゲームね」
 由樹が提案した条件に留恵も了承する。
 由樹と陽介は緻密に作戦を練る。
 話がまとまり、それぞれ配置につく。
 陽介は留恵から投げ返されたボールを受け取りドリブルする。
 バスケをしているわけだが、しっかりとした環境でやっているわけではない。高い木々に囲まれた小さな公園に廃材を使って作ったバスケットリング。今にも壊れそうなので、ダンクは禁止になっている。
 なによりボールが変わっている。毛で覆われているから。
 由樹と陽介でパスを出し合い、留恵を翻弄する。
 陽介にボールが渡るとすぐに狙っていたかのように留恵が飛びかかってきた。
 留恵に奪われまいと高くリングめがけて投げる。
 が、そのボールは高く上げすぎ、ボードの向こうへと超えそうになる。
「ナナ、そっちに行った!」
 合図と共にリングが取り付けられているボード板の裏からナナが出てきた。
 ボード板のわずかな厚みの上からボールに向かって跳ねて触り、軌道の変わったボールはリングの中に入る。
 喜ぶ三人に留恵が言い寄ってきた。
「あんなの反則でしょ!」
「『束になっても』って言うからナナも参加させた」
「ゴールが壊れるから触るなって言ったでしょ」
「ナナが乗ったくらい大丈夫でしょ」
「反則は反則だからね」
 ボールを優しく抱き上げ、家の中に入る。

「もしかして罰ゲーム逃れであんなこと言っているじゃ……」
「あ、そうかも!」
 陽介の発した一言に留恵への怒りがこみ上げてくる由樹。
 この朗らかな春の陽気を、とうに通り越したかのように熱くなる。
 そこへ留恵が半開きに開けたドアから顔を出し、由樹の名を呼ぶ。
 すると返事をした由樹に対し、「ばーか」と言って家のドアを閉め、由樹の怒りをあおる。

 案の定、由樹のイライラ感は増していく。
 これが僕らのいつもの、何気ない日常だった。