Last Kitten Heart friends

 南地区がここまで田舎だと思わなかった。それがなのかが、ここに初めて来た感想だった。
 大都市中央地区並みに交通網が整えられた東地区育ちのなのかにとっては信じられなかった。

 南地区は農業に次いで大きな公園が有名だった。
 人の行き来はあるのに平穏、静寂。散歩する人、昼寝をする人、楽しく会話する人たち。
 閉鎖的な東地区とは何か違う、穏和な南地区にいいイメージを持っていたのはこの公園のイメージが強かったからだった。
 でも、それは駅周辺での話だった。
 少し郊外に行くとそこは別世界。
 どこまでも続く畑。住宅はどこにあるのだろうかと探してもなかなか見つからない。
 バスは一日二本、朝と夕方だけ。通り過ぎる車が少なければ、バスの乗客も。
 本当に人はいるのだろうか。不安になってきた。

 数十分歩いただろうか、新しく住むことになっている家にはまだ距離がある。
 この道と交差するように流れる小川がある。橋を渡る前に、ここで休もう。
 土手に寝転がり空を見上げる。
 雲がまばらに散っている青い空。東地区で見た空より青かった気がする。
 空は同じなのに、どうして地上ではこんなに違ってくるのだろうか。
 なのかは起き上がり頭を振る。
「あんな嫌な東地区のことは忘れよう」
 今は南地区の気持ちのいい、のどかさに浸っていよう。ちょっと眠いし。
 目を閉じ、辺りの音をのんびりと聞く。川のせせらぎ、小鳥のさえずり。東地区にはなかった音だ。
 軽く息を吐く、なんていい所なんだ。気の緩みが眠気を誘ってくる。
 ぼんやりし始めたころ、人が駆ける音がする。
 人なんていたんだ、と考えていたら思いっきり顔を踏みつけられた。
 なのかが顔を押さえながら起き上がると、一人の女の子が目の前にいた。
「ごめんなさい。こんな所に人がいるなんて思わなくて……」
「私も、こんな所に人がいるなんて思わなかったよ」
 心配そうに見つめるその子が夏実との初めての出会いだった。