Last Kitten Heart friends

 南地区には一つだけ駅がある。
 西地区、中央地区、東地区とつながっている鉄道、それと南地区全土を巡ってくるバスターミナル。
 この二つが集まる場所だけに大きな駅になっている。
 そのまわりは農業とは無縁に感じるオフィス街。
 ここだけ都会的だが、大都市中央地区と比べると劣る。
 そして、駅周辺に大きな緑地地帯がある。それが『南駅前大森林公園』。
 駅のバスターミナルから歩くこと数分、外堀が見えてくる。
 これに沿って歩くと、やがて入り口が見えてくるわけだが、なのかは外堀の向こうの景色に興奮気味。
 抑えることができず、途中から走っていった。……ナナを置いて。

 入り口まで走ってきたが、息切れ状態だった。
 普段運動してないからな……。
 荒い呼吸のまま待ち合わせしていた夏実たちの所まで行く。
「大丈夫?」
 夏実の言葉が裏付けるように皆不安そうな顔をしている。
 大丈夫と笑顔でこたえた。
「ねえ、中に入ってもいいかな?」
「時間あるし、いいんじゃない」
 腕時計を見ながら留恵が言った。
「行ってきます」
 と、ひとり走っていった。

 まず、外堀に架かる橋を渡る。長さにして二十メートルくらい。
 これを渡るとすぐに建物がある。
 外堀側についている門と公園側についている門の二つをくぐるとようやく中に入れる。
 なぜ二つ門があるかというと、公園内に小動物が放し飼いにされている。
 この動物たちが外へ出ないようにするため。
 実際、中に入ると白いウサギがなのかを出迎えてくれた。
 かわいさのあまりウサギを抱き上げた。
 ここの動物は、危害とエサを与えなければ自由に触れられる。
 エサをあげられないのが残念だ。

 ウサギたちと別れ、更に奥へ入っていく。
 入ってきた正門から進むと、芝生で埋め尽くされた広場に出ることができる。
 日光浴を楽しんでいる人たちをよく目にする広場だが、今日はイベントがあるということであまり見かけない。
 今回、イベントの関係で入れるのはこの広場のみ。
 それ以外の場所は、鬼ごっこ大会で使うスペースなので、参加者だけが後々入れる。
 今は入れなくても、なのかはこの広場だけでも喜べた。
 一本の大きな木が広場に植えられており、なのかは近寄った。
 なのかの腕の中には、到底収まることはない木を抱きかかえるように体を寄せた。
 東地区の植木鉢に植えられた味気ない観葉植物とは違う、なにか特別な雰囲気をなのかはかみしめていた。
 自然の柔らかさに包まれているなのかに留恵たちが寄ってきた。
「これて良かった?」という問いにうなずく。
「自然の木なんて南地区中どこに出もあるけどね」
 それ、似たようなことを私感じたような……ってなのかは思った。
 でも、ずっと来たかったからこれでいいんだ。
「一日中触れていたかったら、観葉植物を部屋に置いてもいいよね」と陽介。
 それだけは聞きたくなかった。
 この気持ち南地区の人には分かってくれないのかな……。
 せっかくいい気持ちになれたのに。

 遅れて夏実がやってくる。