Last Kitten Heart friends

 大会にエントリーした百五十人が、洋風の古城前で待機していた。
 その古城の背景には、すっきり晴れた空が広がっていた。
「夏実ちゃん、あれがフロシエ城?」
「ううん、迎賓館。フロシエ城は、迎賓館より奥で、池に囲まれているの」
 そもそも南駅前大森林公園とは、昔南地区一帯を治めていた人が住んでいた所で、南地区が民主主義に変わったとき、公園として残すことを条件に明け渡してくれた。
 その名残が外堀だったり、動物が放し飼いになっている。
 そして、公園のシンボルとなっているのが、現在無人のフロシエ城。
 一般的には『フロシエ城』と呼ばれているが、正しくは『フロート・ザ・シエロ城』。
「フロシエ城はなかなか入ることができないから、今回自由に行けるから入ってみたら? 私と夏実ちゃんは別行動を取るし」
 そうだよ、またとないチャンス。行ってみよう。
 迎賓館でも立派な感じ。フロシエ城となればもっとすごいのだろうか。

 スタート一分前。留恵が夏実に耳打ちをしている。
 きっと、作戦の確認だろう。
 陽介たちは、すでに観客席に移動している。
 直接見守ることはできないけど、応援はしてくれるって。
 しかし、緊張してくる。
 夏実たちの話だと、スタート三十分後に、鬼たちが追いかけてくる。
 鬼は大会主催側で用意した人間で、ジャージ姿で顔はマスクで覆われていてどんな顔だか分からない。
 いずれも黒で統一されていて、まるでカラスのようで不気味。
 でも、鬼にはちょうどいい不気味さだ。
 脚力に自信がある人が選ばれている。
 なのでハンデとして、大人は一回捕まればアウトのところを、私と留恵が二回、夏実が三回捕まればアウトとなっている。

 号砲と共に、参加者はクモの子を散らすように公園の奥へと逃げていった。
 留恵は夏実の後を追う形で走っていった。
 私は二人のジャマをしてはいけないと思い、二人とは逆方向の左に行った。
 広場を出ると、舗装させた道の両わきには雑木林が続いていた。
 その林には奥に進むほど深くなり、途中でこの中へ逃げ込んだ。
 休むにはちょうどいい茂みを見つけ、腰を下ろす。
 持続力のないので息が上がっていた。
 走ってばかりが鬼ごっこではない。
 うまく隠れるのも一つの手である。
 隠れたところは、さっき見ていた迎賓館が近くに見える。
 でも、行ってみたいのはフロシエ城。
 なぜ、左方向を選んだかには理由がある。
 なんでも、こっちの方が早く着けることができるから。
 走り続けられる自信がないから、少しずつ近づいていこう。
 そこへ、なのかの頭の上に、黄色い羽のチョウがとまった。
 リボンみたいでかわいい……って言いたいところだが、なのかにしてみればそれは違った。
 東地区の街中では害虫は見かけても、チョウやテントウムシといったかわいらしい美しい虫を見ることは、まず有り得ない。
 虫はすべて害虫、という概念しかないなのかがチョウに気付いた瞬間、大声で悲鳴を上げた。
 優雅にひらひらと飛ぶ姿を見ても青ざめていた。
 南地区にきて初めて見たわけではないが、近くで見たのは初めてだった。
 殺生はならない大会ルールもあり、逃げ回っていた。
 だが、チョウは一匹ではなく、見ては泣き叫ぶの繰り返し。
 こんなことで逃げ切れるのだろうか。