Last Kitten Heart friends

 隠れることなく辺りを照らす太陽が、だいぶ上の方まで昇ってきたお昼過ぎ。
 なのかは、迎賓館を少し北東に行ったところで、木々に紛れていた。
 自分としては、うまく逃げてこれた。
 追いかけられたのは、一度のみ。
 鬼は俊足と聞いていたが、たまたま当たったのがそうだったのか、俊足とは言えず持久力もさほどなかった。
 鬼は一人ではないので、次こそは覚悟しなければならない。
 それに、遠くの方で捕まった人がいるので、そう甘くはないだろう。

 そういえば、夏実と留恵はどうしているのだろうか。
 『作戦がある』って言っていたけど、うまくやっているのか。
 その時、園内に設置されているスピーカーから、
「大会参加者が残り八十人になりました。残った皆様には、サービスとして迎賓館にてお昼食べ放題をご用意いたしました。お気軽に、ご参加ください」
 ちょうどおなかもすいたし、近くだから行こう。
 だが、これがワナだとすぐに気づく。
 園内に散らばった参加者を一カ所に集め、一網打尽にしようということだろう。
 でも、様子をうかがうだけなら大丈夫だろうと、結局近づけるところまで行くことにした。

 木登りは得意ではないが、登りやすい木があったので、その上から観察することにした。
 さっき、ここを通ったときには無かった立て札があり、そこには『お食事処』と大きく書いてある。
 更にその下には『館内には鬼はいません』と、書いてあった。
 やはり警戒して、だれも来ない。
 なのかは、ここに来るのはどんな人だろうと待っていた。
 きっと、頭の悪そうで間抜けなヤツが来るんだろう。
 すると、一人の女の子がやって来た。——夏実だった。
 何の障害の無く、彼女は迎賓館に入っていった。
 恐らくは、満腹で動きづらくなった参加者が、外に出てきたところを捕まるのだろう。

 夏実が出てくる三十分間、ちょっと後悔した。
 もしかしたら、豪華な食事にありつけたのではないか。
 そうじゃなくても、空腹を満たすことができる。
 でも、夏実が出てきた後は、行かなくて良かったと思った。
 案の定、鬼が追いかけてきて夏実はすぐに捕まった。
 だが、夏実にはハンデがあり、またあと一回捕まっても平気だった。
 参加者には番号札が渡されており、皆それを首からかけている。
 それを夏実は三個付けている。
 鬼は、その内の一個を奪い取り、無線で何か連絡している。
 ルールで『ハンデ保有者が捕まった場合、同じ鬼から十分間捕まえることはできない』ので、連絡後鬼は去っていった。
 夏実は再び動き始めたが、運が悪いのか、そういう作戦だったのか、別の鬼がやってきた。
 夏実は慌てて、中からもってきたお弁当箱を両腕に抱えて走っていった。
 中でどれだけ食べたか知らないが、まだ食べるつもりかな……。
 しかし、追いかけられているのに、その表情には余裕が感じられた。
 これがその理由だったのだろう。
 突然、夏実が鬼の前から姿を消したのだ。
 一体何が起こったのか、よく分からなかった。
 私が理解できたのは、ぼう然と立ちつくす鬼と、そのまわりを跳ねる白いウサギだけだった。