Last Kitten Heart friends

 なのかは鬼に見つからないように、フロシエ城に移動した。
 夏実が消えたわけを考えていた。
 一瞬にして消える——まさに瞬間移動。
 前に一度、夏実が密室状態の自分の部屋に現れて、外へ出て行ったのを追いかけたとき、夏実はすでに消え去っていた。
 これが瞬間移動によるものなら、納得がいく。
 留恵のいう、作戦とはこのことか。
 しかし、どうやっているのだろうか。

 そんなことを考えてながら歩いていると、道を横切るチョウの大群。
 幻想的な風景だが、なのかは相変わらず避けて、再び雑木林に入っていく。
 今度は遠くの方に鬼の姿が見えたので、急いで登りやすい木に上がって気付かれないようにした。
 幸い、こっちに来ることはなかった。
 しかし、新たな敵が襲ってくる。
 なのかが登った木には、鳥の巣とその中に卵が眠っていた。
 親鳥にしてみれば、なのかが卵を取ろうとしているんじゃないかと、クチバシで攻撃してきた。
 慌てて木から下りて、着地は成功したが突然の事だったので、足がもつれて転ぶ。
 そこへ体長二十センチメートルくらいの親鳥が、勢いよく突っ込んでくる。
 避けることもできず、もうダメと目をつむる。
 すると、その鳥からとは思えないほどの強い衝撃を受ける。
 目を開けると、夏実のかかと落としは顔の左横へと外れたが、おなかの上に乗られて、しばらく腹部を押さえて苦しんだ。
「だ、大丈夫?」
 と、夏実の問いに大丈夫とうなずく。
 でも、不思議だ。
 いつの間にか、親鳥がいなくなっている。
 最初は、夏実が助けてくれたものだと思っていたが、夏実は急に登場している。
 いったい何があったんだろうか。

「ねえ、フロシエ城って行った?」
「ううん、まだ」
 と、首を振ると、夏実は私の手を引いていく。
「本当は、留恵ちゃんを探さなきゃいけないんだけど、連れて行ってあげる」
 木々の間をすり抜け、チョウの群れに飛び込もうとする。
 私は夏実の手を振りほどいて立ち止まった。
 夏実は、凍りついたように驚いた。
 だが、私の表情を見て、まさかそんな訳ないだろうと恐る恐る、
「チョウ……チョ……? 怖い……の?」
 その問いに少し間を開け、ゆっくりうなずく。
 ウソだろうと一瞬あきれた顔をしたが、大丈夫だよとチョウの群れに入り、腕を広げて笑って見せた。
 それでも近づこうとしないので、引き込み入れる。
「ね、大丈夫でしょ」
 ここまでしてくれた夏実に、笑顔を見せた。
「フロシエ城の城主さんは、動物好きだったんだよ。だから自分が去っても動物たちは残してくれと、今でも動物たちはここで暮らしているんだよ」
 一匹のチョウが夏実にとまるが、続けて話す。
「私もね、自然や動物たちを大切にしていきたいの」
 自分の想いを語る夏実を、どこか誇らしく思えた。
「もっと、いいところがあるの」
 と、再び手を握り走っていく。

 今度は、夏実の方から立ち止まる。
 目の前には大きな池がある。
 夏実は対岸の方を指さして、
「あれがフロート・ザ・シエロ城」
 確かにこの景色、すごかった。