Last Kitten Heart friends

 私の手を引いていた夏実は、大きな池の前で立ち止まる。
 その池は、きれいなガラスのように透きとおっていて、空の景色を映し出していた。
「見て見て、この池に魚がいるんだよ」
 と、池をのぞき込む。
 一緒になって見てみると、確かに小さな魚が群れを成して泳いでいる。
 なのかは、気持ちのどこかが安らいでいくのを感じた。
 東地区では経験することは無かった、自然との触れ合い。
 これを守りたい夏実の思いも分かってあげられそうだ。
「それでね、フロシエ城は池の向こうなの」
 池を取り囲むように建つ大きな城。
 今日みたいに晴れた日、池の外側から見ると、まるで空に浮かんでいるように見えるところから『フロート・ザ・シエロ城(空に浮かぶ城)』と呼ばれている。
「ちょっと遠回りだけど、行こう」
 と、再び手を引く。
 この池を渡るには二つ。東側の橋を渡る方法。
 でも、今回は鬼ごっこ中ということで、西側の唯一池に取り囲まれていない方を目指す。
 こっちの方が、逃げ道が多い。
 ただ、なのかは思った。
 瞬間移動があるなら、それで渡ればいいのでは。
 それを口にしたら夏実は足を止めた。
「……見てた?」
「うすうす感じていた」
 困った表情を見て、聞いてはいけないことだったと思い知らされた。
 どうこの沈黙状態を変えるか、なのかも困った。
 そこへ夏実が何かに気づいて、
「急いで走って!!」
 後ろから鬼がやって来た。
 夏実は走りながら何かを探している。
 だが、見つからなかったらしく
「フロシエ城に隠れよう」
 と、中に入っていく。

 中は古びた木造作り。
 たまに悲鳴をあげる床が、抜けるんじゃないかと不安だった。
 壁に絵画が飾られているなどあったが、気にとめることもできず、ただ広い廊下と階段を走り抜けた。
 最上階に着いたころには鬼をまくことができて、ある一室に逃げ込む。
 そこにはいくつか大きな箱が置かれていた。
 二人で同じ箱に入って休むことにした。
「これで休めるね」
「そうだね」
 二人とも息が上がっていた。
「しばらくしたら、外に出ようね」
 夏実は小声で話しかける。
 そう同意したかったが、追いかけてきた鬼がまだあきらめていなく、この部屋にたどり着いてしまった。
 そして、物音がする。箱を開けている音だ。
 絶体絶命のピンチ。
「夏実ちゃん、どうしよう……」
 と、声をかけるが返答がない。
 なんだか箱の中が広くなった気がする。
 ついに箱の中が明るくなると、なのかの肩を軽くたたかれる。
「四十七番確保」
 と、鬼が無線で報告する。
 一回目という事で連れ出すこともなく、去っていった。
 なのかの横には夏実ではなく、一匹の茶色いウサギだった。
 抱き上げてみて、
「夏実ちゃん……なの」
 ウサギは首をかしげるだけだった。