Last Kitten Heart friends

 夏実は瞬間移動に加えて、ウサギにも化けられるのか?
 茶色いウサギを抱き上げ、考えていた。
 ここにいても仕方がないので、城の中を見ながら出ていこう。
 きしむ床に不安を感じながら、廊下を歩いていった。
 南地区は、住む人を最優先で守られてきた。
 それは、現政府も王政時代も。
 ずっと裕福な所だったのだろう。
 ぼんやり城内に浸っていると、抱いていたウサギが暴れだし、降りたがっていた。
 なのかは、そっと下ろしてあげると、外の方へ跳ねていった。
 その夏実かもしれないウサギのあとを、追っていった。
 まるで、何かの童話だ。

 実はこのウサギ、夏実とはまったく関係がなく、園内にいる普通のウサギだった。
 本物の夏実は、留恵にとやかく言われていた。
「確かに、私が悪かった部分もあるよ。夏実ちゃんが“おとり”になって持ってきてくれたお弁当を食べていたら、鬼が襲ってきてやむなくどこかに飛ばしたけど、その場合は夏実ちゃんが私を探すんじゃなくて、私が夏実ちゃんを探すの! ウロチョロされるから時間がかかって仕方がなく、移動元を見つけて連れ戻したけどさ……」
 夏実は、ごめんねと手を合わせる。
 留恵がため息混じりに横を向くと、木の根に向かって話しかけている人を見つける。
 どうやら鬼ではなく、参加者だ。
 近づいてみれば、なのかが夏実の名を根元にある穴に向かって叫んでいた。
 なのかは追いかけてきたウサギを探していたわけだが、二人にしてみればそんな小さな穴にいるわけないだろうと不可解な目で見ていた。
 本物の夏実を見て、元に戻ったのと聞いてきたことに、意味不明な雰囲気になっていた。
 だが、留恵はこの言動の背景にあるものに気づき、後ずさりする。
 それは的中する。
「作戦って瞬間移動か何か」
 夏実じゃ答えてくれないから、留恵に聞いてきた。
「しゅ、シュンカンイドウ? なんのこと?」
 やっぱりバレているのだと必死にごまかした。
「留恵ちゃん、鬼、来ている!」
 鬼を確認すると、そばにあったリュックを背負い、
「夏実ちゃん、あの大きな木に隠れて!」
 と、指さす方向へ全力で走る。
 夏実の後ろをつけるように留恵が、更に後ろになのかと続いて逃げていった。
 木の近くに来ると、
「三、二、一」
 と、留恵が何かの合図と共に木の陰に隠れる。
 通り抜けるようにすぐに出てきたが、留恵一人だけで、夏実は木の陰にもいなかった。
 まるで手品を見ているようだった。
「ねえ、今のが瞬間移動? おもしろそう」
 留恵はさらにスピードを上げる。
 明らかになのかからも、逃げていた。
 なのかもついていこうと速度を上げたが、背中のリュックが不安定にもかかわらず留恵の方が速い。
 留恵が瞬間移動を使わなかったのは、自前の脚力で逃げ切れるから?
 だとしても、楽に逃げる方法を使わないなんて。

 留恵との距離がどんどん離れ、いつしか鬼は照準をなのかに絞ってきた。
 雑木林に逃げ込み、木々を交わす。
 しかし、鬼もしっかりついてくる。
 鬼が手を伸ばせるところまで近づいたが、切り返しを使った。
 でも、走り続けて息苦しい……。
 胸を押さえて、なお走る。
 でも……限界だった。

 ウサギを追いかけてきた、不思議の国の旅は、逆に追いかけられて幕を閉じる。