Last Kitten Heart friends

 鬼ごっこ大会翌日、夏実たちの家は個々の部屋と共有のリビングルームがある。
 そのリビングルームに集まっていた。朝からみんな笑顔だった。
「賞金が手に入った!!」
 高々にあげられた留恵の手には、目録が掲げられていた。
 中身については後日振り込まれる。
 夏実たちのまわりで一緒に喜ぶ生き物がいる。
 そこへ、玄関ドアをノックするものがいる。
「私、でるよ」
 夏実が動いたが、留恵は夏実を座らせた。
「いいよ。私が行く。賞金目当ての客かも」
 ドアチェーンをかけたまま玄関ドアを開けると、なのかがいた。
「ちょっと待ってね」
 戸を閉じると、慌ててリビングに戻った。
「大変! なのかが来た。キャパ隠して」
 三人が部屋を片付けるスキを少しでも作ろうと、なのかの所に戻る。
 再びドアを開けてみる。
「急にどうしたの」
「昨日、迷惑をかけちゃったかなと思って、お菓子持ってきたけど、来て……まずかった?」
 昨日より、今日この瞬間の方が迷惑だ。
 でも、そんなこと言っていたら隠しているものがバレる。
「ううん、大丈夫。ちょっと散らかっているけど」
 留恵は時間を稼ごうと、わざとスリッパを出すのに手間取ってみたりした。
 いつもと違うことに、なのかは辺りをちらほら見渡した。

 リビングにつくと、確かに散らかっていた。
 留恵にしてみれば、キャパさえ隠せればよかった。
「ほんとごめんね。今お茶出すから」
 なのかをソファーに座らせた。
「お茶なんか出していいの」留恵の横に、由樹が寄ってきて小声で話してきた。
「だって、すぐに追い返すわけにはいかないでしょ。それにちゃんと隠した?」
「留恵ちゃんの部屋に」
「なんで私の部屋なの!」
「だって二階でちょうどよかったし」
「それはもういいから、見てきて。瞬間移動で抜け出されたら困るし」
 留恵の部屋に入ると、キャパが二匹寄ってきた。
 二匹とも抱き上げてあげたが、もう一匹足りない。
 急いで部屋を探した。ベットの下、タンスの中、どこにもいない。
 由樹がこの部屋にいないと気づいたころ、なのかのヒザの上にいた。
 なのかは最初は、動物の毛を使ったクッションか何かだと思っていた。
 だけど、手がある、足もある、そして目まである。明らかに生き物だ。
 何これと尋ねたら、頭を抱えてしゃがみ込む留恵とぼう然と見る二人。

 由樹と残りの二匹をリビングに連れ戻してきた。
 留恵は、なのかと向き合うかたちでソファーに座る。
「まず。絶対に口外しないと誓って」
 なのかはゆっくりうなずく。
「うちの近くに大きな森があるでしょ。そこに住んでいる、だれにもその存在を知られていない生き物。それが“キャパ”。特殊能力を個々に違って持っている。例えば、バスケットボールのようによく弾んだり、火を噴いたり」
「じゃあ、瞬間移動も……」
「そう、大会の時は触ったことのある生き物同士の位置を入れ替える能力。前日に園内の動物たちを触らせておいて、私が指示して夏実ちゃんを入れ替えて逃がす」
「言葉、分かるの?」
「みたいだね。言葉を発することはないけど」
「でも、本当に瞬間移動ができる子もいるんだよ」夏実がうれしそうに話す。
「一匹ね。その子は子供の子供だから、どこに行くか分からないけどね」
 なのかは、夏実が突然自分の部屋に現れたのは、これかと気づいた。
「特殊能力を持っている理由は、自分たちの住みかである森を守るためみたい。聞いたことがない? あの森に入ったら出てこれなくなるって」
「大家さんに聞いた」
「全部キャパの仕業。彼らが言うには、侵入者に対してあらゆる手段をとり、最終的に瞬間移動で『冷たくて白い大地のド真ん中』に飛ばすんだって」
「そこって、もしかして……」
「そう、ほぼ間違いなく北地区」
「だって、ここから北地区って中央地区よりはるか先じゃない。しかも、大きな山を越えないと……」
 なのかは、驚いて立ち上がった。
「だからすごいよね。それをテレパシーみたいな形で教えてもらった」
「もともとケガをしていた子供のキャパを助けたところ、仲良くなった。それでいろいろ教えてもらった」
 留恵の後ろに立つ陽介が話す。
「でも、仲良くなれたのは子供だけ。大人のキャパはいまだに私たちのことを警戒している」
「それでも守ってあげたくて、あの森を政府から買い取るの」
 そう話す夏実の目は輝いていた。
「大会の賞金でも、あと十回くらいは勝ち残らないとダメだけどね」
 なのかはそれを聞いて安心した。
 人知れず怪しいことをしているのではと聞かされたが、そんな事情があったとは。

 なのかが家に帰ると、大家さんに電報が手渡される。
 それはなぜか快気祝いの電報だったが、緊張が走る。
 ついに呼び出しがかかってしまった。