Last Kitten Heart friends

 太陽の恵みを受けて育ったトマト。それは太陽に似て、真っ赤だった。
「んん!! よく育っている」
 留恵が、ひとかじりして叫んだ。
 夏実も、留恵のをもらって食べて満足そうだった。
 今日はトマトの収穫日。南地区は気候が一定なので、年中いろんな作物が採ることができる。
 日が暮れる前に、広大な畑から収穫を終わりにしなくては。

 夕方、いつも畑仕事が終わったあと、おフロに入ってから夕食にしている。
 今夜のメニューは、早速採れた野菜を使っている。
「明日、陽ちゃんと中央地区に行くから留守番よろしくね」
 夏実と由樹共にうなずく。
 以前からの予定で、いつも野菜を買ってくれている店に出向くことになっている。
 そことの商談後、買い出しをして日帰りで帰ってくる予定だ。

 朝、バス停に向かうとなのかの姿があった。
「あれ? お出かけ??」
 留恵が声をかけると、驚いた表情を見せる。
「うん、ちょっとね……。中央地区に」
「私たちも、そうなの」
 なのかは顔が一瞬引きつったが、すぐに笑顔を見せた。
「じゃあ、向こうの駅まで一緒だね」
 見送りについてきた夏実たちに手を振り、バスに乗る。

 南駅前大森林公園の横を通り過ぎて、バスターミナルに着く。
 実に二週間ぶりだ。三人は駅構内へと進む。
 ほかの地区に行くには、二つ必要となるものがある。
 ひとつは鉄道の乗車料金。これは駅で、すぐに買える。
 もうひとつはパスポート。こっちは事前に取得しなければならない。
 乗車券と弁当を買って、列車に乗り込む。
 南地区から行けるのは、西地区、中央地区、東地区。
 でも、東地区は往復では行けない。なぜなら、観光等で行く人が少ないからだ。
 南地区から東地区へ貨物列車が行くだけで、まれに往復便が出る程度。
 一般的には中央地区経由で行くこのコースで、なのかもやって来た。
 三人が座ったのは、互いに向き合えるボックス席を選んだ。
「なんで夏実ちゃんとか連れて行かないの?」
 お弁当の煮物を突っつく留恵に、ふと聞いてみた。
「パスポートの申請料、高いから四人分は作れない。それに、他地区に行くのは危険が多いから、二人で手一杯だよ」
 確かに、中央地区は危険な街ではないが、南地区ほど安全ではない。
 でも、十二、十四才でも危ないんじゃ……。
 自分も十四才だから人の心配をしてはいられない。
「中央地区になにしに行くの?」
「ちょっと、ビジネス。なのかは?」
「里帰り」
 もちろんこれはウソである。
 中央地区から来たということを押し通さなければならない。

 三時間かけて中央地区の駅に着いた。
 南地区を出るときにもあったが、パスポートチェックがある。
 無事に通り抜けて、中央地区の街に出る。
 なのかのパスポートは偽造品で、ちょっとバレるんじゃないかと不安だった。
 本物を持っている二人と一緒に通過すれば、ごまかせるんじゃないかと、ここまでくっついてきた。
 駅を出ると二人とは別れ、なのかは街の中へ歩いていく。
 高いビルに囲まれた街道を通り、いくつかの細い路地を通っていく。
 見上げるとわずかながら青い空が見える。
 薄暗い路地に建つ、古びたマンションにたどり着く。
 ひと呼吸して、中へと入っていった。