Last Kitten Heart friends

 中央地区の大通りにある高級レストラン。
 まわりとは浮いているのも気にせず、テーブルの料理を放り込む。
「いつ来てもおいしいよね」
「だって、素材がいいんだもん」
「でも、留恵ちゃん。商談、うまくいったね」
「西地区に進出するからそっちもお願いできないか……って。もちろんOKだよ」
「これで収入アップ確実だけど、輸送経路どうするか」
「中央地区に出荷するときは下準備にいろいろ苦労したからね……。でも、西地区は知り合いがいるから、何とかなるでしょう」
「あそこに頼むの?」
「それがベストでしょ」
 そう言いながら、トマトパスタをフォークに巻き付ける。
 すべての料理は店側のご厚意で出されたもので、いわばタダ飯。
「食べ終わったら買い物を済ませて、さっさと帰ろう。最近、治安よくないし」
「クローバーでしょ。反政府組織の」
「そう、東地区政府が追っている。逃亡先が南地区って言われたことがあったけど、途中大きな川があるから、中央地区じゃないかって」
「中央地区は鉄道で直接行けるからね。あ……。でも、パスポートとかどうしたんだろう」
「偽造したんじゃない?」
 あっさりした感じで、留恵が答える。

 レストランを出て、足早に活気あふれる商店街に行く。
「留恵ちゃんさぁ……。服も南地区で買えるじゃない」
「ダメ! 気に入っているメーカーが中央地区にしかないの」
 食料品は自前か交換で得て、どうしても手に入りづらい肉や海産物だけは、ほかの日用品と一緒に南地区の駅周辺で買い出しに来ている。
 でも、留恵は気に入った衣類や服飾品が見つからないので、たまに中央地区に来たときに必ず立ち寄っている。
 一人楽しげな留恵を壁際で見ている。それに気づいて留恵が声をかけてきた。
「陽ちゃんも何か探してくれば?」
「そうする。なにも買わないと思うけど」
「迷子にならないでね」
「番号覚えたから、その時は電話探すよ」
 店の外に出ると、人であふれていた。
 流れるようにショーウィンドウを眺めていく。
 ファッションに興味がないわけではない。
 ただ、大半を夏実たちのみで過ごし、他人と会うのは今日みたいにたまにあるくらい。
 凝ったところで見るのも同居人のみ。
 それでも、選んで着るところが留恵とは違っていた。

 今日は、いつもと違って少ない気がした。
 それは確信に変わっていく。
 人の数は明らかに減っていき、店を閉じるところが出てきた。
 何かが、いつもと違う。
 すると、大きなショッピングバッグを二つ抱えた留恵が後ろからやって来た。
「やっと見つけた。急いで帰るよ」
 どうしてと聞くと、バッグをひとつ押しつけ、
「東地区政府軍がこの辺りにいるのよ! クローバーのアジトを見つけたとかどうとか」
 いつも冷静な留恵がこの慌てよう。事態の悪さが伝わってくる。
「とにかく駅に」
 バッグを右肩にかけて走り出す。
「さっき、店の人から聞いて急いで買ってきた」
「ずいぶん買ったね」
「そっちのバッグは夏実ちゃん用だからね」
「それでも多いよ!」

 商店街を抜けて駅前通りに入る。
 すると、駅の方から走ってきた男性に話しかけられる。
「もしかして、君たち駅に行くつもりじゃ……?」
「ええ……」留恵は不安そうな声を出す。
「駅はもうダメだ。あいつらに抑えられている」
「遅かったか……」

 留恵たちがレストランを出たころは平然としていた中央地区中心街。
 それが二時間後には大パニック状態に陥っていた。
 駅を取り囲むように軍兵が立ち並ぶ。
 駅正面口には現場指揮官らしき女性が立ちはだかる。
「どこのだれだろうと、ここは通さないよ」