Last Kitten Heart friends

 かすかな望みをかけて、駅までやって来た。
 聞いたとおり、駅ビルを囲うように軍兵が包囲していた。
 ひとりの男が、二人の男に抑えつけられながら叫んでいる。
「てめえら、ここは中央地区だぞ! 出ていけ」
「お前、やめろよ。相手が悪すぎる。ここはいったん引き下がろう……」
 男の右腕をしっかり抑えつけ、なだめる。
 しかし、その男の怒りは収まらず、叫び続ける。
 ケリを入れようと右足を振りかざすが、届かなかった。
 逆に、チャンスとばかりに上げた足を、仲間内に取られてしまった。
 一人は男の上半身を、もう一人はもう片方の足も取り、タンカのようにどこかへ運ばれてしまった。
 そんな光景を留恵と陽介は、目の当たりにする。
 すると、ためらうことなく留恵は一人の軍兵に近寄った。
「私たち南地区に帰りたいんだけど、通してくれる?」
「ダメだ!」
 ぶっきらぼうに答えられ、留恵はムッとする。
「いいじゃない。帰るだけなんだし」
 その軍兵は手で留恵を追い払う。
 私もさっきの男のように暴れようかと、にらみつけて去っていった。
 陽介は、足早に駅を離れていく留恵を追っていく。
「留恵ちゃん……。どうするの? 戦うの?」
「バカ! 冗談で言ったとしても程があるでしょ。相手は最強最悪の東地区政府軍だよ。私たちがどんな手を使ったとしても、勝てるわけないでしょ」
 留恵はいらだちを吹き飛ばそうと、大きく息を吐く。
「ひとまず、人がいないところへ。ひとつ帰る方法がある」

 中心街から出てみると、住宅街に小さな公園があった。
 いたってシンプルな公園の一角にあった、木の茂みに隠れた。
「どうやって帰るの?」
「こんな時のために買った、モバイルフォンがあるじゃない」
 なぜか無意味に陽介の背中をたたく。
 そして、バッグから取り出して南地区の自宅にかける。
「あ、夏実ちゃん、私」
「留恵ちゃん、商談ってうまくいった?」
「うん。そっちはね。でも、大変なことになって……」
 留恵は今の状況をすべて話した。
「どうすればいいの?」
「ねえ、キャパって、今ウチにいる?」
「いるよ」
「だったら、私たちと入れ替えて帰るから、どうでもいいような……。例えばネズミとか。二匹集めて。そしたら、また連絡して」
「二匹? なのかちゃんは?」
「別行動だから、一緒にはいない」
「三匹探してくるから、そっちも探して」
 そう言って切られてしまった。
 電話を横で聞いていた陽介は、
「そうか。キャパに入れ替えてもらって帰るのか。そうすれば安全に帰れるね」
「……夏実ちゃんが、難題を吹っかけてきた」
 ため息混じりに訳を話す。
「でも、どこにいても入れ変えられるじゃない」
「キャパが一度でも触っていれば。あるとしたら、なのかが突然訪ねてきたあの日のみ。私が見ていた限り、触っていたのは一番小さい子のみ。違う?」
「確か、由樹ちゃんが連れてきたあと、留恵ちゃんの横にずっといた気が……」
 そうなんだよと、うなずく。
「方法はひとつ。まず、私か陽ちゃん、どっちかがキャパと入れ替える。なのかをタッチして三人で帰る。それにはなのかを、ここに連れてこなければならない」
「この危険状態から?」
「じゃあ、夏実ちゃんに断ってよ!」
 陽介にモバイルフォンを突きつける。
「……夏実ちゃんって、何でも助けたがるから、折れてくれないと思う」
「だったら探しに行くよ」
 茂みから出て、来た道を引き返す。
 確かに難題だ。