Last Kitten Heart friends

 血痕をたどると、裏通りに入っていく。
 ビルの谷間で薄暗い。
 さらに続けて歩いていくと、古びた十三階はあろうビルに入り込んでいく。
 どうやら、もう使われていないらしい。
 というのもオフィスデスクが山積みに置かれ、ホコリまみれだったからだ。
 玄関口は定かではないが、もとから開けっ放しになっていた。
 なのかも跡をつけて入ってみるが、ロビー部分中央で血こんが途切れている。
 ある言葉を思いだして、立ち止まる。
 もし、追っ手につけられたことを想定して、ワナを仕掛けておくこと。
 そういう話を“兵士さん”と“達人さん”で、していた気がする。
 “達人さん”は『自分は逃げ切れる自信がある』と、言って“兵士さん”の提案を受け入れる気はなかったが。
 あたりを見渡すが、それっぽいものやセンサーらしきものが見あたらない。
 なのかは後ずさりしながら、逆再生したかのように外へと向かう。
 すでに通り過ぎてしまった可能性もあるので、行きと同じように戻らないとダメだ。
 無事に出て、ほかの入り口を探すことにした。

 カギがかかっていない裏口があり、簡単に進入することができた。
 地下に下りる階段を見つけると、再び血の跡があった。
 一段ずつ下りていくと、自分の鼓動が上がっていくのが感じられた。
 少し、息苦しい……。
 下りた先の部屋をひとつのぞいてみたが、何もない。
 次の部屋、おそるおそる見てみると絶句した。
 人の形をしたものが、奥で横になっていた。
 近寄ってみるとまぎれもなく、血まみれの“兵士さん”だった。
 そばまで来ると、意識はあるみたいだった。
「なのか……か……」
 かなり弱々しい声だった。
 なのかは、声も出せず涙だけあふれ出てきた。
「なのか。お前だけで……逃げろ」
 首を横に振る。
「オレのことは気にするな……。“切り札”を使う。」
「でも……。でも……」
 やっと出すことができた単語。なのかの抵抗が込められている。
「大丈夫……。最低でも“約束”は守るから」
 その言葉に、涙が止まらなくなった。
 こんな状態で、“約束”なんて言わないでよ。
「もうひとつの隠れ家……。そっちに行けば、安全だから」
 離れようとしない、なのかの手を振り払おうとしたが、そこまでの力もなく振り切れなかった。
 だが、なのかも感じ取ってくれたのか、立ち上がり帰ってくれた。
 薄れていく意識の中、なのかが去るのを見届ける。
「なのかには、ああ言ったが“約束”守れそうになさそうだ」

 なのかは、戻る道を間違えた。
 冷静さをたもてず、泣きながら走った結果、裏口ではなく正面ロビーに出てしまった。
 するとさっきはいなかった、やせ形の男が倒れていた。
 着ていた服が東地区政府軍の軍服で驚いて、その弾みで泣きやんだ。
 意識は、ないみたい。
 近寄ろうと思ったが、“兵士さん”のことを思いだし、再び走る。
 北西方向へ逃げようと思ったら、街中に聞こえるくらいの大音量があたりを響かせる。
「私は、中央地区区長だ。東地区政府軍に次ぐ。これは侵略行為である。即時撤退しなければ、我々はこの行為に対して対処する用意がある」
 街中に備え付けられたスピーカーから聞こえてくる声に、一般区民からの歓声が上がる。

 その裏では、駅にいた女性隊長が、なのかとすれ違うように“兵士さん”のいる部屋にたどり着いた。
「みいーつけた!」
 その姿を確認した“兵士さん”は、ついに気を失ってしまった。