Last Kitten Heart friends

 夕暮れすぎに、南地区の家に近いバス停に降り立った。
 あとは少し歩けば、久しぶりの我が家に着く。
 相変わらずの色とりどりの畑が続く光景。
 ちょっとホッとした。
 途中の十字路を左に曲がると、自宅アパートに行く最短ルートだが、あえて直進した。
 すると、思った通り夏実たちの畑に人がいた。
 だけど、いたのは由樹一人だけだった。
 なのかが近づくと、それに気づいた由樹は幽霊を見たかのように驚いていた。
 なにせ、一ヶ月も消息を絶っていたわけだ。無理もない。
「ほかの三人は?」
「あの二人はまた出張。西地区なんだけどね」
 なのかは『西地区』という言葉に、ビクッとする。
「また、“ビジネス”? 大変だね」
「留恵ちゃんは、違うんだけどね」
「そうなんだ……。夏実ちゃんは?」
 由樹は一瞬焦った。余計なことを言ってしまったが、幸い追及を免れた。
「家で、ふて腐れている。でも、会ってあげたらきっと直るよ」
「そうしてあげる」そのつもりで、こっちに立ち寄ったのだから。
「あと、夏実ちゃんの機嫌が良くなったら言って。『畑仕事、手伝え』って」
「畑仕事って」
「今アブラナの種、まいているの。これじゃ広くて終わらないよ」
 よく見るとナナも手伝っていた。

 玄関前に取り付けられたチャイムを鳴らす。
 なんにも反応がない。
 夏実が機嫌悪いって、本当なんだな。
 二度目のチャイムで、やっと出てきた。
 由樹同様、驚きの表情だったが喜びのあまり抱きついてきた。「よかった……」
「ごめんね。心配掛けちゃって……」
 夕暮れすぎに出た幽霊を、夏実は離そうとしなかった。
「本当は留恵さんたちとも、会いたかったんだけどね」
 それを聞くと、夏実の反応が変わった。不機嫌の原因はそこか。
「でも、今までどうしていたの?」
「中央地区の家にずっと居たよ」
 本当は、ずっと西地区にいた。

 中央地区で、“達人さん”と再会した後、二人で西地区に入った。
 西地区は、中央地区みたいな都会的なところではなく、南地区みたいな田舎ではない、中間的なところだ。
 五つの地区で唯一海と接しているので、海産物が採れるのが一番の強みだった。
 列車を降りて、石畳で舗装された駅前広場に出る。
「“王様さん”のところに行く前に、食事でも行きませんか。自分、いいところ知っているんですよ」
 その誘いに、もちろん乗った。“達人さん”の手に引かれてついていく。
 なのかはデート気分を味わおうと寄り添う。
 でも、こうしていないと危なっかしい。
 西地区駅周辺はこう言われている。

——決して、一人では歩いてはいけない危険な繁華街。