Last Kitten Heart friends

 “達人さん”に連れられてきた店は、比較的新しくキレイな佇まいだった。
 店内は白を基調として、清潔感がある。なのかも気に入った。
 西地区なので新鮮な海産物を使ったパスタを注文して、軽く食事を済ませることにした。
 お互いのあったことも話して、“達人さん”の笑い話混じりの会話がとても楽しかった。
 ただ、店の外では平穏ではなかった。
 通りから、中年女性の悲鳴が聞こえてきた。
 その声に背を向けて逃げる少年と、反応して近づく警官。
「どうされましたか?」「スリよ」
 また、例のか……と、警官は女性の指さす方を見る。
 淡々とマニュアル通りとも思えるような被害状況を聞くと、
「あなた警官でしょ! 追いかけないの?」
「私ども、一同あげて追っておりますが、なかなか……」「今、追いかけなさいよ!」
 そのやりとりに通行人は、目を向けるが無関心そうに通り過ぎていく。

 なのかが次に連れられたのは、目的地の隠れ家だった。
 初めて来たが、見た目ボロ屋だが広めの庭もある一軒家を使っていた。
 玄関には行かずに、勝手口の方へ連れられた。
「ヘタに玄関から入ると、ミサイルが飛んでくるんすよ」
 そういえば、中央地区のマンションにも、ひとつそういう玄関ドアがあったな。
「勝手口はカギで入れば、大丈夫っす」
「また、“王様さん”なの?」
「そうっす。西地区だからそこまでしなくてもいいって、自分言ったんすけどね」
 中に入りキッチンを抜けて、リビングに行くと“王様さん”が待っていてくれた。
「お久しぶりです」なのかが元気よくあいさつする。
「お嬢がご無事で、なによりです」
 “王様さん”は四十五歳前後の男性。中年のオッサンっていう感じはなく、どちらかといえば紳士な人だ。
「ひとまず、ゆっくり休んで。話し合いはその後で」

 日没後、三人で会議が進められた。
「最初の議題は、ジャック君が抜けた今後について」
 いきなり重たい話が来る。
「今までは、指揮系統はジャック君がやってくれていたが、それは私が引く継ぐ。お前は今まで以上にがんばれ」
「先輩の分まで、がんばりまっする」
 ちょっとふざけて見せたが、やる気は十分だった。
「お嬢には申し訳ないが、こいつを手伝ってあげて。ジャック君がいっていたものより少し増えるが」
 本当は嫌だったが、仕方なく引き受けた。
「危険なものは、まわさないから。次に、このことを踏まえての本題だ。物資の問題」
 そういうと、一冊にまとめられた資料をテーブル中央に置く。
「なにっすか。これ?」
「西地区の犯罪集団について」
 なのかは資料をめくり、軽く見てみた。
「それを見ると分かるのだが、かなりいい資金を持っている」
「へえ……。スリで……」
「収入源は、それだけじゃないが。けど、ヤツらを知っているだろ」
「今日の昼間も、見ましたからね」
「お前! 帰りが遅いと思ったら、また寄り道していたな!」
「あ、あ、あれっす。お嬢とメシっす」
 あきれ顔で、軽くため息をつく。
「まあ、いい。その資料と添付の乗っ取り作戦、ジャック君考案だから」
 資料から全部“兵士さん”一人でやっていたんだと、二人は驚く。
「だが、中央地区にいて作ったものだ。どうしてもアジトの場所だけは、調べきれなかった」
「ここの機動部隊も把握できない場所を調べろってやつっすか」
 西地区の場合、政府直下の軍隊はいなく、警察組織の一部として機動部隊がいる。
「調べるのはカンタンだろ。釣り針の先にエサを付ければいいだろ」
 二人がこの言葉を理解したとき、闘志と不安が生まれた。