Last Kitten Heart friends

 数日後、なのかは手提げバッグを持ちながら、駅周辺を歩き回った。
 別の場所で、“王様さん”が車で待機している。
 危険なものは、まわさないって言っていたのにウソつきと不満に感じていた。
 アジトを調べるためとはいえ、こんなことで分かるのかな……。
 いたってシンプルな作戦だ。
 発信器が入ったバッグを持って、なのかがおとりとなって歩く。
 わざとスリに遭い、発信器をもとに割り出すものだ。
 この街では、日中なら一時間に一回は確実に起きている事件。
 カンタンに釣れる魚だよと、“王様さん”は言うが、本当に大丈夫か不安だった。
 そもそも“達人さん”は、ついてきているのか。
 あまりにも離れていて、姿が見えづらい。
 なのかは不安も一緒に握りしめられた、釣りざおを振り回すしかなかった。

 三十分後、釣り糸に付けられた浮きが、動きを見せる。
 手慣れた手つきで、エサのバッグを奪い去っていった。
 “達人さん”が来てくれるのかと思いきや、来たのは突風のみでだれも来てくれない。
 すべてが一瞬の出来事で、状況を飲み込めなかった。
 数分後、“王様さん”が走らせる車がやって来た。
 そのころにはバッグがとられたことと、ここまで放置されたことは分かった。
 ふくれ顔で助手席に乗り込み、閉めるドアに八つ当たりした。
「まあ、怒るなって。これ以上、危険なことはさせないよ」
 もう十分すぎるよ。
 発信器から送られた情報をもとに、車を走らせる。

 同じようなところを、行ったり来たりさせられた。恐らくは追跡させないためだろう。
 発信器が指すところに着くと、そこはゴミ集積場だった。
「やっぱりな……。向こうもこういうことには、慣れているみたいだ」
 “王様さん”は発信器を回収すると、車に戻った。
 助手席に居座っていた、なのかに発信器を見せる。
「じゃあ、どうやって見つけるの?」
「そうじゃないかと思って、“達人さん”が追跡している」
「大丈夫なの?」
「そうか……。お嬢も知らなかったのか……。あいつの本気を出したときの能力」

 仕方がなく、海辺の公園に来た。当然ながら初めて見る海。
 石階段に座り潮風に当たりながら、ぼんやり夕方の海を眺めていると、横に“王様さん”が座ってきた。
「この質問は、あまりしたくなかった。だから、答えたくなかったら無理に言わなくていい」
 少しのためらいを挟む。
「……殺されたこと、恨んでいるか?」
 なのかは少し考えた。そして、ゆっくりとうなずく。
「そうだな。目の前だったからな」
 なのかは表情を変えることなく、まっすぐ前を見つめていた。
「一番思い出したくないことだが、お嬢を守るためにはこうするしかないことは分かってくれ」
 小さな自分が、何もできなかった悔しさはある。でも……。
 なのかは立ち上がり、海の方へ歩き始めた。
 この話は、やっぱりしたくなかった。
「もし、これがすべて終わったらお嬢の好きなようにやっていい。ほかの地区に行っても構わない。私が説得する」
 なのかを呼び止めるように叫ぶ。
 なのかは立ち止まり、振り返るといつの間にか“達人さん”が戻ってきていた。
「自分、人を探すのが仕事じゃないんすよ。スリ犯探しの次は、お嬢たちですか!」
 かなり機嫌が悪かった。
「お前、見つかったのか?」
「バッチリっすよ。“王様さん”」
 どうやら大漁のようだが、なのかは背景に映る夕日のようなむなしさを感じずにいられなかった。