Last Kitten Heart friends

 二人が西地区の駅舎を出たころには、お昼をとうに過ぎていた。
「なんだかんだで遅くなったから、先にセラの所に寄るね」
 留恵は、いつもの平静を装う。
 泣かれた後だけに、話しかけづらい。
 さっきのことは、夏実や由樹には黙っておこう。

 駅を南に行ったところに、集合住宅がある。
 小さな公園が併設しており、ブランコやすべり台といった遊具が置いてある。
 植木も植えられており、自然との調和がとれている。
 そのうちの一棟に入り、玄関チャイムを鳴らす。
 中から女の子がひとり出てきて、「陽たん、会いたかった」と、抱きつく。
 そして、すぐに陽介の手を引いて、ドアを閉めて中に入っていった。
 玄関前にひとり取り残された留恵は、ドアノブをまわしてみる。
 カギはかかっていなかったので、奥へと入っていく。
 3LDK、日当たりの良いこの部屋でセラひとりで住んでいる。
 どうも同い年の陽介のことが好きらしく、離そうとしない。
 あの時セラを連れて行かなくてよかったと、改めて留恵は思った。
 リビングのソファーに、ぬいぐるみのように陽介を座らせて、その横を陣取っていた。
「あ、留恵さんも居たの?」と、わざとらしく言う。
 いたし、来るって連絡を入れたのも私だし。
 本当は、セラを頼るのは嫌だった。
 だけど、陽介がいるといろいろ頼みを聞いてくれるし、それに今は本支部幹部だし。
「しばらく泊めてもらうから」
 一部屋あいていることを知っている留恵は、荷物をその部屋に置いてくる。
「陽たんは、私と一緒の部屋だからね」
 それを聞きつけた留恵は、慌ててリビングへ行く。
「それは、私が許さないからね」
 お気に入りのオモチャを取り上げられたくないかのように、『ぬいぐるみ』の腕をつかむ。
 そして、セラに一日中にらまれ続けられた。

 結局、留恵が強引に割り込んで、三人で一夜を過ごした。
 根に持ったのか、セラは二人分の朝ご飯しか作らなかった。
 仕方がなく、留恵は自分で作った。
 『ぬいぐるみ』を横に置かれて、座るところがセラの正面しかなかった。
 ここでも、にらまれた。別に、おままごとのジャマをする気ないし。
 セラが食べさせようとしたが、無抵抗の『ぬいぐるみ』もそれはさすがに嫌がった。
 それを見た留恵は、どこかホッとした。

 身仕度を済ませると、ひとり留恵は玄関に向かう。
「陽ちゃん、あとお願いね」陽介だけに手を振る。
「帰ってこなくて、いいよ」憎たらしくセラが返す。
 外に出ると、軽くため息をつく。
 陽介を残したことには不安があるが、それ以上に自分にも。
 留恵が去ったことを確認すると、「留恵さんって何かあったの?」部屋に戻りながら聞く。
 いつも張り合ってくるのに、それに比べたら抑え気味で、実は心配していた。
「うん……。まあ……」
 列車での出来事は、セラにも言わないでおこう。
「本部に行くのはいいけど、何しに行くの?」
「分からない。でも、留恵ちゃんは『察しはついている』って」
 そうだろうねと、うなずく。
「もしかしたら、留恵ちゃん……本部と手を切るつもりじゃあ」
 その言葉に振り向く。
「本部と? ムリに決まっているじゃない。してどうするの? 自殺行為じゃない」
「それは、留恵ちゃんも分かっているはずだけど……」
 列車の中での留恵の言動が、何度も駆けめぐってきた。