Last Kitten Heart friends

 店を出ると、セラおすすめの場所へ向かう事になった。
 セラは当然のように、陽介の左腕に抱きついて歩く。
 カップルじゃなければ、仲がいい兄弟か。そんなところだ。
 その後ろを、成仏できなかった霊が付けてまわる。
 まるで、悩みを抱えすぎた留恵みたいだ。
 一方的に話すセラの会話が、何かの呪文に聞こえたのか定かではない。
「ごめん……。私、一人にさせて」
 別にジャマとも思っていないが、悪霊退散とでも聞こえてしまったのか。
「いいけど……。じゃあ……さっきのお店に集合ね」
 留恵は、なにも言わず去ってしまった。
「励ましてあげようと思ったのに……」
 留恵の背後にあるものを取り除いてあげたかったが、本人ごと除霊してしまった。
 除霊師になれないなら、狩人になるか。
「じゃあ。行こうか」
 哀れにも捕まってしまった、野ウサギの気持ちだ。
 ヒーローっていないものかと、陽介は思った。

 当てもなく、ただ考え事をしながら路地を歩く。
 途方もないって、こういうことを言うんだろうな。
 嫌がっているが、陽介もセラに好かれて、満更でもないと感じているはずだ。
 認めたくない部分もあるが、セラだってかわいいし。
 西地区へと続く線路の上を歩きながら、このままでついていっていいのだろうかと疑問に思った。
 元々仲良くしていた陽介と由樹に声をかけた。そして、どうしてもこの子だけはと夏実を連れて南地区に戻る事にした。
 多くの障害にぶち当たり、最終的には協力があり今に至る。
 家族のように生活してきたが、いつかは離ればなれになるだろうと予期していた。
 由樹や夏実もそうなるんだろうな。
 私は夏実にどうしてあげたら、よかったのだろうか。
 自分の元を離れていくのを、見守るのがいいのか。
 でも、間違った方向には行かせたくない。

 そこへ背後からひったくり犯がやってきて、留恵の荷物を奪おうとする。
 とっさに反応して荷物を引き戻そうとしたとき、犯人と目が合い留恵の顔を見るなりあ然となる。
 その時、一人の青年が割り込んでくる。それをいい事に、なにも取らずに逃げていった。
 二十代前半の男は留恵に近づいてきた。
「おケガはないですか」
 乱れた服を直しながらうなずいて答えた。
「よかったら食事でも来ませんか……。自分、おごりますよ」
 どうせ行くところもないし、少しだけならとついていく事にした。

 青年は『ヂュリー』と名乗ってきた。
 彼に連れられてきた店は、比較的新しくキレイなお店だった。
「一ヶ月くらい前にも来ているくらい、気に入っているんすよ」
「えー。だれとですか?」
「同じグループにいる子ですよ。昨日、送り届けたんすけどね」
 留恵はコップの水を一口飲む。
「さっきはありがとうございます」
「いいっす。大丈夫っす」
 本当は助けてもらわなくても、自分でどうにか出来たのだが、彼の行動を無駄にはしたくなかった。
「でも、珍しいですよね。みんな無関心なのに……」
「自分、正義の味方っすから」
 その一言に思わず笑ってしまった。それはこっちに来て初めて見せる笑顔だった。

 時間だと彼はいい、朝留恵が来ていたカフェまで送ってもらった。
 遠く離れていく彼に対して、いつまでも見つめていた。
 一方、留恵と離れていくとモバイルフォンが鳴る。
「おい、ヂュリー! いつになったら帰ってくるんだ!!」
「ちょっとメシっす。いうか減っては戦は出来ぬって言うじゃないっすか」
 それを『道草を食う』って言うんだよ。
「大丈夫っすよ。お嬢はちゃんと南地区に送り届けましたよ。“王様さん”」

「留恵ちゃん! 留恵ちゃん!!」
 自分の名を呼ばれて、やっと我に返る。
「留恵ちゃん。さっきからずっと呼んでいたのに」
「う、うん。ごめん」
 陽介は心配そうにしているが、ちょっとした変化にセラは気づいていたらしく、にやけていた。