Last Kitten Heart friends

 まだ、日も昇らぬ深夜。
 本革のイスに座り、机の上に足を投げ出して一休みする。
 さすがに少しばかり疲れたが、『仕事』の方は九割方消化した。
 夕食に食べたものも胃袋が片付けてしまい、空腹感を覚えた。
 食べるものがないか、フロア中あさり始める。小型の冷蔵庫と出会い、オレンジジュースを手にする。
「こんなんじゃ、腹は満たされねーな」そう言いつつも口にする。
 そこへ鉄パイプを持った少年が、背後から襲いかかってきた。すぐに回避し、横腹にケリを数発入れて吹っ飛ばした。
 右手に持っていた紙パックの中身を、すきっ腹へ移し替える。
「いい加減、諦めろよ」
 セリフは少年へ、空きパックはゴミ箱へ捨て去っていった。

 一階の事務室を物色した後、二階では事務机で作ったバリケードが張られていて、隙間から銃口がいくつもこちらに向いていた。
「貴様、何者なんだ!」
「悪ふざけの過ぎた子をお仕置きに来た」至って冷静に、バリケードへ向かって叫ぶ。
 こう壁を築かれると、アレがやりづらい。どこか上がれるポイントがないか探す。
 すると銃弾が、次々とこっちへ飛んでくる。余裕で交わしながら廊下の角に待避する。
「子どもが危ないもの持つなって!」
 手ぶらで来たため、素手で反撃するしかない。その方が自分のポリシーを貫ける。
 間を見計らい、銃撃を簡単に避けて、見つけたポイントを通って壁の反対側へ到達する。
 全部で七人。すかさず手にしていた武器を奪い取ると、今度は銃口を少年たちに向ける。
「悪い子は乾燥機の中に入れるからな!」その言葉を聞くと、一様に青ざめていった。

 四階まで、あっさり制圧した。残すは五階のみ。
 さすがは最上階、怖そうな少年たちが待っていた。自分にしてみれば、どうってことはない。
「こいつらが幹部ってわけか」まさにラストボス。
 よくあるどこかの勇者様が、愛と平和を掲げて、悪者が待つ塔を登り出す。
 様々な苦難を乗り越えて、最上階にたどり着く。
 ボスと対面して、決まって絶体絶命のピンチに遭遇する。
 そこへ仲間の手助けがあり、強力な武器を手にする。
 そして、悪者は消えて滅びましたとさ、めでたし、めでたし。
 そんな感じのシナリオが、一般的だ。
 しかし、“達人さん”の場合、傷一つ負う事なく五階もすぐさま黙らせた。
 その後はしばらく最上階の重役室で、本革のイスで一休み。
 残党による奇襲もあったが、全て難なく交わした。
 夜明け前になって、レベルが桁違いに高い勇者に白旗を振った。
 それを見た“達人さん”は、机の上に立った。
「今日から、ここのボスはオレだ!」

 朝、セラの家に電話が入る。出てみると本部長さんからだった。
「なんですか。朝から冗談言わないでくださいよ」
 いつもの明るいトーンで返すが、相手は真逆だった。
「それ……本当なの?」
 あまりにも深刻な事態に動揺せずにいられなかった。
 おままごと部屋もとい、ダイニングルームに二人がのんびりとしていた。
「あのさ……。さっき本部長さんから、電話があったんだけどね……」
 言うことに戸惑った。なかなか話せず、自分のトレーナーの腹部あたりをつかむ。
 こんなこと、今までなかったから。