Last Kitten Heart friends

 セラがダイニングルームに行くと、二人とものんびりしていた。
「あのさ……。さっき本部長さんから、電話があったんだけどね……」
 急なことに、自分でも整理がついていなかった。
 軽く深呼吸する。「本部が襲撃されて、乗っ取られたんだって」
「へー。だれに?」
 二人の反応は薄い。さっきの自分のようにウソだと思っている。
 だったら言うわよ、この名前を。「クローバーのエース」
「あ、そう。朝からおもしろい冗談を言うんだね」
「王子様の夢でも見てろ! バカ!」キレてみた。
「陽たんは、信じてくれるよね?」
 超威圧的なセリフ。うなずくしかなかった。さもなければ、覚めることのない夢を永久に見続けることになりそうから。
 また電話が鳴り、悪ふざけもできない対応が迫られる。セラは要職だから、ほかからも来るのだろう。
「もしかして、さっきの本当?」夢見のお姫様、やっとお目覚め。
「さっきから、言っているじゃない!」
「でも、なんで?」「それは、こっちが聞きたい」
 疲れ切った様子でイスに座る。まるで軟体動物のようにテーブルに顔をつけて倒れる。その顔は留恵にキレたせいかほのかに赤かった。ゆでタコ?
「クローバーって、一体何なの……?」そして、グチり出す。
「三つ葉会の残党で作った反政府組織でしょ」
「それくらい知っているわよ!」もう一度、留恵にキレる。
「謎が多いじゃない。顔写真の一枚も流れないし、人数だって定かじゃないし」
「数十人いる説と、四人しかいない説。十三人キッチリいる説……とか」
 陽介が天井を見上げながら記憶を引き出す。「ジャック、クイーン、キング、エース。でも、ジャックは先日の事件で遺体を収容したとか。じゃあ、今は三人?」
「本人と断定されているから、最少人数はそうなるね」
「そのクローバーがこんなに近くにいるとは思わなかった」セラがため息をつく。留恵の低気圧とは違う、熱帯低気圧。
「所在すら分かってないからね。留恵ちゃん、僕らも気をつけよう」
「そうだね」一瞬、なのかを思い浮かべる。
 最初、出会ったばかりのころは疑念を抱いていた。どちらかと言えば、見ず知らずの人間を家に上げて、自分に近寄ってくる恐怖をそう理由付けたかっただけかもしれない。結果、夏実にはああ言ってしまい、そして口を利いてくれなくなった。なんで信じてあげられなかったのだろう。
「これから僕たちどうなるんだ?」
「知らないわよ。少なくとも二人は南支部長さんに聞いて」ちょっと投げやりになってきている。
「もう成るようにしか成らないから。クイーンでも仕留めないと」
「絶対キケンな女だよ、きっと。弾薬片手にマシンガンで乱射を繰り返すような」思いつくイメージを並べてみた。恐らく、火薬くさいのだろう。
「クローバーってクイーンの指示で動いているんでしょ。多分。だってクイーンってそもそも三つ葉会の——」
 そこまでセラが言いかけたとき、また電話が鳴る。
「電話、ぶち壊したい!」その前にセラが壊れた。
 結局は出て、用件を聞いて戻ってきた。
「本支部長さんから。クローバーの手が及ぶ前に本部と切るって。南支部もそうなるんじゃないの」
 それを聞いた留恵はイスから立ち上がった。「私たち、帰るよ。いろいろ心配になってきたし」
 再び、テーブルに張り付いているセラは、右手だけ振る。

 玄関に出るが見送りはなかった。
「留恵ちゃん、本当にいいの?」
「用件は片付いている。この状況だと残してきた二人が不安だし」
「いや……。留恵ちゃんの王子様は?」
 そう言うと、留恵の右こぶしが飛んできた。