Last Kitten Heart friends

 中央地区とつなぐレールが遠くに見える、西地区の未開拓地。
 当然のことながら人気が無いこの場所から、早朝の西地区中心部へ進入して調査。ターゲットを捕獲する予定だったが、川から上がるとそこにターゲットの一人が待ち構えていた。
「クローバーのエースじゃないか。おかげで探す手間が省けた」軍服姿の隊長が話しかける。
「待ってたぜ」人を見下すような言い方だ。
「省けたついでに聞こう。キングは今どこだ」
「知らんな」そろそろ北地区に着いたことだと思うが。
「ならば、クイーンは?」「それこそ知らん」
 ほのぼの話し合いで、どうにかするのは無理だな。だったらひとまず。
「我々が得た情報だと、あの時ジャックのそばにクイーンがいたらしいな」
「さあ、どうだろう」まず一人目。
「クイーンも消しておけば、君らの敗北は決定的だったのに」
「だとしても、打つ手はあるさ」二人目終了。
「そもそも、お嬢は関係ないだろう!」
「エース……。君も知っているだろう。血を引いているくらい」
 三人目、力が入りすぎた。
「気に入らないな。その呼び方」
「おや。気に入っていると聞いているが」
 四人目を沈める。
「お嬢が付けてくれたからだ。お前らはどれだけお嬢から奪えば気が済むんだ!」
「一生苦しみを与え続けるまでだ」
 ゴミ掃除完了。
「本当に気にいらねえ」
「君一人で“我々”とやろうというのか」
「は? お前一人しかいないだろう」
「君の目は正常かい?」
「お前の脳は異常だろ。今すぐ病院に行け。使えないザコ五匹連れて」
 後ろを振り返ると連れてきた部下が、地面の上で天日干しになっていた。
「貴様! いつの間に」
「朝食に干物でもと、作ってみました」まさに朝飯前。いや、さっき食べたな。
「次は私をするのが、君の所望かね」
「お前は叩いて、すり身にしてやるよ」
「骨も残さずってわけか。いいだろう、君はハチの巣になってもらおうか」拳銃を向けると、明らかに素手で挑もうとするエースの姿があった。
「君を不憫に思うよ。なんだったら、この拳銃を貸そうか?」
「では、お言葉に甘えて」右手にあった拳銃は隊長に向けられ、エースが手中に収めていた。
「チッ。外した」引き金に手がかかる前に反応してきた。
「『取れるものなら』のセリフくらい言わせてくれないのか」
「オレの台本に、そんなセリフは無い」
 一旦、エースから離れていった。
「さっきといい、距離があるのに何をしたんだ」
「冥土の土産に聞くか?」「君の置き土産に聞きたいね」
「複雑に入り組んだ東地区中心部じゃ使えないんでね。初披露さ。それにある人から使うなって言われていてね……遺言になってしまったが」
「ジャックか?」「いや、別の人さ」
 しかし、こいつの動きに無駄がない。十五〜十六才の子ども相手と言うこともあり、乗っ取りは楽に行けた。だが、訓練された隊長クラスともなれば格が違いすぎる。
 けど、負けるわけにはいかない。
「なんて動きが速いんだ」隊長が独り言めいたことを発する。
「貴様。本当に人間か?」「ごく普通の人間さ……出身地以外は」
「……出身地?」
「お前にゃあ、関係ないことさ」
 再び反撃に移る。
「君の悪あがきも、終わらせてあげよう」
「正義のヒーロー気取りのやつらに負けてたまるか。こっちの顔写真を出さないのも、その一環か」
「だとしたら」
「こっちとしては動きやすい。その方がかえって世間に不安をあおりやすくなる。そこでヒーロー様が登場ですか」
「東地区のゴミどもを一掃するのにプロセスは関係ない」
「それにしては、かなり焦っているみたいだが」
 銃弾をかわして右フックを入れてみたが、プロボクサー並みに避けられた。
「悪の芽を摘み取るのに時間を惜しまないだけだ」
「言い訳にしか聞こえないが」
「うるさい! 我々は日も当たらない地下で暮らすことになった苦痛を思い知らせてやる」
 確か先祖代々それを営みにしてきたんじゃないの。地元にいたときはそう教わったが。だったら、先祖恨めよ。
「だからこそ、理想国家を築くのだ!」拳銃を捨て、接近戦になってきた。
「はっ! 弾切れか」
「確実にダメージを与えるためだ」
「さっきから当たってねーもんな」こっちも避けるのにギリギリの状態だが。
 消耗戦に持ち込みたいが、向こうは恐らくまだ武器を隠し持っているだろう。
「完璧な理想国家の礎を作るには復古のイメージがある“クイーン”がまず不要である」
 一瞬のスキを突いて腹蹴りが入った。「お嬢は渡せねえよ」
「そして……東地区中心部という魔物をコントロールできる男。あの街を設計した“キング”こそ邪魔者だ」
 “王様さん”なら可能だ。隠れ家にも証拠隠滅システムを入れるくらいだ。東地区の街にも似たのがあるのだろう。
「ただでさえ街のシステムを把握している上、頭脳がそっち側にあるのがやっかいなのだよ」
 ジャック先輩も頭がキレる。こういう人間が多くいると助かる。自分の場合はただキレるだけだ。
「妨害する人間も同罪とみなし、根こそぎ消し去る」
「理想国家なんてお前らにはできない。苦しんでいる住人がどれだけいるか」
「今にも理解される」
 腐ったやつらに話しても無駄だ。そろそろ終わらすか。
「隊長さん……そろそろバテてきたんじゃない」背後に回って入れた跳び蹴りが決まった。かなりよろけてきている。
「そっちこそ息が上がっているじゃないか」
「それは気のせいだ」とはいえ、アレをやるのも限りが見えてきた。
「ちょこまかと動きやがって。瞬間移動か?」「瞬間移動? ちょっと違うな」
 受けたダメージは少ないが、体力消費が激しい。いい加減、決めなきゃ。
「出身地が違う……。貴様、まさか北地区の……!」
そこへエースの特殊能力、超高速移動で打った全力右アッパーが入る。