Last Kitten Heart friends

 あれは五年前のことだった。
 南地区の北外れの一角にある広大な土地。表通り沿いに隣接しているが、このまま郊外に出ると川にぶつかるため、人通りは少ない。川の向こうは他地区になるので渡ることもない。この場所に児童福祉施設が立てられていた。施設内部はそこそこ広さはあったが、庭に当たる部分は全面に芝生が敷かれていてかなり広かった。数は定かではないが三十人くらいは居たのではないだろうか。その中で小さな班が形成されていた。その内のひとつが僕と由樹、そして留恵だった。
「今日はバスケでもしようか」
「今日もでしょ」というか毎日これ。
「また、留恵ちゃんズルするつもりでしょ!」
「しないわよ」
 今日も由樹が留恵に突っかかる、見慣れた光景だ。この頃の留恵は今では見ることのないポニーテイル姿が見られた。アレンジは加えていたが、だいたい後ろで結っていたことが多かった。
「じゃあ始めるよ」なにも知らないまだ少女のあどけなさを感じる笑顔を見せた。

 この三、四人の班で常に行動することが多く、寝る部屋も一緒だった。
「ねえ、最近入ってきた女の子。かわいいと思わない?」
 由樹と自分の間に寝ている留恵が話しかけてきた。ベッドの上で寝ていたが、キレイなシングルベッドではなく、どこから調達したのか古びたキングサイズのベッドがひとつ。子供三人とはいえ、狭い。消灯時間はとうに過ぎたので、あたりは真っ暗だ。
「夏実ちゃんだっけ?」
「うん、そう。うちの班にあんなかわいい子が入ってくればいいのに」
「かわいげのない男の子ですみませんね」と由樹はそう言うが、この時は女の子っぽくも見えた。性別を知らなかったら好きになっていたかもしれない。
「でもよりによってCグループなんだって」
「せめて私たちAグループでしょ」
「ひどいことされなければいいけど」
 ひどいこと——それは仲間内で、ということではない。外側からのことだ。
 表向きは慈善事業に熱心かもしれないが、裏では残酷だ。職員からの虐待が激しく横行していたのだ。殴られるくらいならまだいい方なのだ。時には服を汚した子に対して、そのまま洗濯機に入れたれたこともある。
 当然のことながら逃げ出す子もいた。施設内の子供が危険にさらされないようにと高く作られた塀が妨げになっており、まずここで挫折する。せっかく壁の向こうに出られても半数は連れ戻されてしまう。そうなってしまうと奥の部屋に行き着き、その中から泣き叫ぶ声が断続的に聞こえていた。何があったか語れるものじゃない。
 この『しつけ』を受けやすいのがランク付けされたCグループ。だいたい悪い子が多いのも一因だったが。夏実はそんな悪い子には見えない。Cグループは権力もあり、他のグループへの影響力もあったので、夏実を横取りしたのかもしれない。だからこそ留恵が夏実のことを心配しているのかもしれない。

 そんなある日、世界を揺るがす大事件が東地区で起きてしまう。