Last Kitten Heart friends

 深夜、黒いキャンバスに描かれていた赤い炎。炎を巻き上げるかのように火の粉が舞い上がり、薄暗い街を幻想的に光り輝くように美しかった。
 けど、その下では残酷な事態になっているのは承知の上だ。なぜなら、施設に火を放った張本人であるCグループと共に逃げてきたわけだから。
 今回の件ばかりは普段伝わらないAグループにも流れており、全員生き残っていた。
 見つからないように現場から離れ、川がある北へ逃げていった。
 一旦振り返り、今まで住んでいた地点を見つめていた。留恵たちと出会えたのは良かったが他にいい思い出がない。物心ついたときにはあの施設にいて、初めて離れることに戸惑いはあるがこれで良かったと言い聞かせた。
 このまま川沿いを歩いて西地区を目指す。なぜ西地区かというと当然ながら東地区は危険すぎる。中央地区は都会で溶け込みやすいが見つかりやすくもある。

 夜明け前、川岸を歩き始めた。この川は川幅が広く五メートルほど下を流れているので上の街からはすぐ真下までは見えづらい。大勢でも発見されにくい、素敵なコースだ。
 とはいえ、小石の上を歩き続けるのは疲れる。由樹も汗だくになりながら歩いていた。
 留恵は至って涼しそうにしていた。いや、何かを考えていて平然を装っていたようにも見えた。
 誰も文句を言うこともなく歩き続け、ついに一日かけて鉄橋の所までやって来た。
 翌日にはここを渡り、鉄道のレールに沿って西地区に進む長い道のりが待っている。
 今日はこの辺で休むことになった。
「留恵ちゃん、大丈夫……?」
「うん……まあ……」
 身を寄せ合うように寝たが、野宿にも程がある。
 何人かは交代で見張りをしていたので、安全は確保されていた。しかし、地べたで眠るのは下が固すぎて体は痛いし、ゆっくり休めなかった。

 いよいよ鉄道沿いに歩く。時計と時刻表は脱出前に準備されていて、確実に長い鉄橋の上を列車が通らない時間を狙い、反対岸に渡る。
 無事に渡りきると、今度は草むらや岩陰に隠れた。発見されることを警戒し、通る時刻に合わせて事前にこういったことを繰り返していた。
 地区と地区の境目はあるが、境界沿いに人が住んでいることは少ない。もともと五つ街が合ってそれを“地区”という分け方をしただけで、ひとつの土地を五分割して作ったわけではない。川や山で区切り、それでも分けづらいところは人のいないところを適当に線を引いた。その後、鉄道を引くことになった際、人のいないところを狙っている。なので、列車さえ気をつければ、鉄道沿いで見つかることはない。

 西地区へ行く最終便を遠くの茂みから、通り過ぎることを見守った。深夜はめったに走ることはないので、隠れるのも今日はこれで終わり。
 はるか遠くの西地区へ行くため、二日目の野宿先を探し回る。
 突然、暗闇の中から声がした。
「ごめん。私、やっぱりついて行けない」
 その発声主は一人の子を抱き上げ、走り去っていった。
 あたりは騒然とするが、それを振り払う別の声。
「いいさ、脱落者はほっとけ。裏切るようなら制裁を加える」
 この声はCグループでもリーダー格のもの。何事もなかったように平然を取り戻した。
 しかし、あの声——留恵だ。
 そして連れ去られたのは夏実っぽい。
 そのことに由樹も気づいたらしい。
「ど、どうしよう」
「スキを見て、追いかけよう」

 日の出前、なんとか二人を見つけ出した。
 こうして、四人の新しい人生が夜明けと一緒に始まった。