Last Kitten Heart friends

 とはいったものの、この先どうすればよいか。当てもなく、ただ来た道を引き返していた。
「留恵ちゃん、疲れた!」
「うるさい!」
 由樹のダダに一喝する。
 日も昇ってきて、気温も上がってくる。その上、無計画に飛び出してきたので、食料もない。荒野のど真ん中なので確保も出来ない。黙々と歩き続けるしかなかった。
「どこまで行くつもり……?」
「まず、鉄橋まで」
「丸一日かかるぞ」
「他に行くところ、ないし……」
 確かにそうなんだが。
「ねえ。どうして、みんなと違う方向に行くの……?」
 夏実から痛いところを突いてくる質問。
「もっと、いいところに行くの」
「いいところ?」
「そう! 今よりずっといいところ」
 必死だった。そうまで留恵が守りたかったものって……。

 歩き続けて一日。日も沈み、遠くに見えるのは南地区の光。それ以外は何も見えない。歩き続けた夏実は留恵におんぶされ、ぐっすり寝ていた。その負担は留恵にとって厳しいものだった。
「大丈夫……?」
「うん……。平気だよ……」
 そう言っている割には息が荒く、暗闇で表情はうかがい知れないが尋常ではないことは分かった。
「休まない?」
「とりあえず、安全な所に……着いてから……」
 実行犯ではないとはいえ、関係している以上僕たちにとって安全な場所なんてもうない。
 すると何かが倒れるような音と、断末魔の叫び声のようなものが聞こえた。
「留恵ちゃん?!」
 やっぱり無理していたんだ。夏実を背負ったままうつぶせに倒れていた。その衝撃でさすがに夏実もぼんやりと起き上がった。
「ごめん……。大丈夫……。起きるから……」
「いいって! 今日はここで休もう……」
 ひとまず留恵をあおむけにしようと横へ転がすと、黄色い目が鋭く光る生き物が留恵の下でもがいていた。
「殺す気か!」
 その生き物は引っかこうとしてきたので、留恵を元に戻した。
「すみません……。襲わないから助けてください……」
 留恵を再び起こすと慌ててその場から脱出した。あの素早い動き、大きさ、なによりあの目。推測すると……猫?
「もしかして、黒猫さん?」夏実が聞いた。
 この世界では会話できる動物は珍しくない。
「せっかくここで休んでいたのに、圧死させるなんてヒドイよ」
「こんな郊外で?」
「街で盗ってきた食料とかを、ここに隠しているんだよ」
——食料!!
「由樹! その猫、捕まえろ」
「ラジャー!」
「な、何をするんだ!」

 地中に隠れていたもののおかげで、四人は救われた。
「ヒドイよ……。殺そうとした上、食べ物まで盗るなんて……」
「もともと盗んだもの。おあいこ」
 留恵もだいぶ回復していた。
「いいな……。この猫、利用しようっかなー」
「嫌だといったら?」
「そういえば、私聞いたことがある。商店街の食べ物を盗ってまわる野良猫がいるって。商店街に突き出そうかな……?」
「分かったよ……。言うとおりにするよ」
「じゃあ、早速。住む家が欲しい」
「ハードル高すぎるだろ!」
「え? 嫌なら……」
「住めればいいんだろ。こっそり暮らすことになるが」

 連れられたのは南駅前大森林公園。
「ここって夜は入れないんじゃ……」
「抜け道がある」
 そういって、ついていくと公園とは別の場所、下水管にたどり着いた。決して大きいものではないが、子供の大きさくらいなら入れそうだった。
「この下水管、フロシエ城の地下とつながっている。管理人に見つからなければ、生活できると思うよ」
 曲がりくねった下水管をくぐると、確かにフロシエ城の地下室だった。
 そこは猫や犬、ウサギといった小動物が出迎えてくれた。
「行く当てのない者の家だよ。うまいこと公園の動物と紛れて暮らしている」
「ありがとう、黒猫さん」
 これがナナという猫との共同生活が始まった。