Last Kitten Heart friends

 由樹との深夜の密会。それを夏実に盗み聞きされてしまった。
 夏実が大声で叫んだ後、特に追いかけることもしなかった。なぜなら、夏実が全力で廊下を走り抜けた後にそのまま自分の部屋の扉をゴールテープにしていった。そして、そのままふて寝。いつものことと、特に心配はしなかった。
 その後も由樹と話し合われた。
 夏実のこと、留恵のこと、キャパのこと—— 話し出したらキリがなかった。もっと言えばなのかのことだってある。手に余るほどの話題があった。そして、それらの結論も出ることはなかった。夜も深くなると必ず現れる、強敵睡魔との激闘を引き起こそうという選択肢は二人にはなく、あっさりと真っ白なシーツの上で身を委ねていった。

 

 朝起きると、由樹が一人キッチンで忙しく動いていた。
「今日って、由樹が作っているの?」
「だって……、誰も作らないんだもん。夏実ちゃんは、盗み取るようにパンだけを部屋に持って行ったし、留恵ちゃんは起きてこないし」
「こそこそしていないで、さっさと和解すればいいのに……」
 不用意に言ってまた夏実に聞き取られないかあたりを見渡したが、今回はその心配はなかった。
「留恵ちゃんも出てこないから、新聞も溜まってきたし……」
 一応この郊外にも新聞は配達される。但し、数日まとめて届けられる。読むのも留恵くらいで、他は読むことはほぼない。
 玄関前に積み上げられて新聞の山を家の中に入れる。十日分くらいはあるだろうか。一番上の新聞は『買収』などの文字が躍っていたか気にはしなかった。だいたい、この手のニュースは商業の中心・中央地区のことが多い。南地区の、それも街外れのド田舎には関係なかった。
「ひとりだけずるい……」
 由樹が一人分しか朝食を作らなかったので、ついそう言ってしまった。
「二人が西地区言っている間、ずっとこうだよ」
「まあ、別にいいけど」
 どうせ期待はしていなかったし。
「食べたら、畑仕事がたっぷりあるから」
「どれくらいあるんだよ」
「半分以上……」
「もう少し、進んでいると思ったな……」
「だって! 夏実ちゃん、ちっともやってくれないんだもん!」
 やっぱりあのまま、ふて腐れていたな……。
「今日中に、アブラナの種。全部巻かなきゃいけないからね」
 軽くため息をつく。せめて、留恵ちゃんでもいいから手伝ってくれたら……。

 朝食を済ませ、一息ついてから畑に出て行った。
「相変わらず、広いな……」
 由樹が進捗状況を指し示すと唖然とした。前に夏実が一面に植えたらキレイだからと、留恵も売れるからと前々から植えていている一画がある。勝手に生えてくるのもあるが、販売目的なので計画的に植えている。言った本人たちがやらないから、つらいところだ。
 ナナも手伝ってくれたが、どうにも先が見えなかった。
「これ、今日中に終わるか……?」
「じゃないと、他の畑仕事もあるし……」
 するとそこへ一人の女の子が近づいてきた。
「夏実ちゃん?」
「……手伝う」
 由樹から種を持って行くと、そのまま離れたところで種まきを始めた。
「これって、やっぱり……?」
「でも、しばらく様子を見た方がいいかも。本人も『ほっといてよ』って言ったし」
 決してこちらには近づかず、種まきに専念した。ただ時折こちらの方を見てくる。一度目が合い、慌てて作業に戻る。
「やっぱり、自分じゃ言えなくなったから、キッカケ作ってほしいんじゃないのかな……?」
「だろうね……。夕食あたりでやってみる?」
 それにしても、さっきからトラックを目にする。この辺は車なんて滅多に通らないからすぐ気になる。何かを運び入れているみたいだった。

 日没前にはどうにか種まきを終わらせた。
「戻ったら、シャワー浴びよう。夏実ちゃんも」
「そうだね」
 聞き取れるかどうかの小さすぎる声で返事をする。
 玄関を開けて、そのままリビングに流れ込むと留恵がいた。
「あれ? 具合よくなった?」
「別に私は悪くないよ」
 だったら畑仕事をしろよ。
「なんか飲む?」
「お茶でいいかな」
 気を利かせて聞いた由樹は、チャンスを作ってあげたと後ろにいるはずの夏実の方を見た。
「あ! いない」
 あっさり二階に行ってしまった。

「私は怒ってないけどね」
 だったら和解しろよ。二人はそう思った。
「いろいろ考えたけど、私にとって一番大事なのはみんな。バンダのこともあってちょっとおかしくなっていた」
 ちょっとどころではなかったが。
「夏実ちゃんをとられることもなくなったし、本人次第だよ」
「怒っちゃダメだよ」
「大丈夫。なんか話したらすっきりした。もう心配事なんて何もない」
 元気そうな留恵が見られてよかった。
「結構、新聞が溜まっているんだね」
「留恵ちゃんが読まないから。出かけていた分もある」
 留恵が一番上にあった新聞を取り広げた。じっくり読んでいるのかと思ったら、硬直していた。
「なによ、これ……いつの新聞?」
「どうしたの?」
「あれ……。キャパの森、買収された……」