Short×Short cake vol.2

004:夏の忘れられない想い出

この男さえ、この店に来なければ、落ち着いた空気が流れ続けることができたのに。
息を切らしながらも話した、この人の熱い気持ち、夏の時ではなく、今さら冬になって言うのだろう……。ちょっと理解できない。
彼の希望には応えてあげたいが、でも……。

まだ、蒸し暑い夏だった頃。
そうは思わなかったけど、今なら好きと言える。
夏の頃は、いて当たり前な存在だったのに、凍りつくような風が吹く冬になって、君の影は見あたらない。
僕はほのかな優しい灯に見守られながら探し回った。
甘いイチゴの香りがして、白く透きとおっている中でも紅く染めているところは今となってはかわいいと感じる。でも、冷たくて、頭を痛めることもあった。
夏が終わって見向きもしなかったのに、求めようとする気持ちはなぜなんだろう。
熱くなった気持ちが後押ししているような、そんな気もした。

街はキラキラ輝くイルミネーション。楽しく話す人々の群れ。
雑踏も草むらをかき分けるように抜け出した裏路地。
明るく照らされた店の光が僕を導くようだった。
その小さな一軒の店に駆け込んで行った。
慌ただしく入ってきた僕に、奥から出てきた店員が対応してくれた。
「あ、あのう、すみません……」
息が上がって言葉が詰まった。
迷惑だとは分かっていた。店員さんの顔を見れば分かる。
今さらになって言うことではない。
でも、言わなければ始まらないし、なにも起こらない。
ここは思い切って声に出した。
「すみません。……かき氷、……いちご味のかき氷……ください。」