Short×Short cake vol.5

007:腹黒桃子のバレンタインデー

「ヨシトくん! 今日って何の日か知ってる?」
 同じ高校の一年生で、部活も同じ桃子さんが、放課後話しかけてきた。
「ん? なんだろうね」
 もちろん知っている。ちょっとだけ期待感を持った。
「チョコレート食べ放題の日です!!」
「まあ、モテる男はそうだろうな」
 オレは、ひとつでも貰えたら御の字だ。
「だ・か・ら」
 両手を使い、なにかを要求するしぐさを見せた。
「だからなんですか?」
「私にチョコを下さいな」
「なんでだよ! 普通逆だろう」
 やっぱり、スイーツ大好き桃子さんから貰えるわけないか。普段からドーナッツやらケーキなどを奢らせようとするからな……。
「別にね、必ずしも女の子からチョコをあげなきゃいけない日じゃないのよ」
「最近はそんな風潮もあるな」
 友達同士であげたりとか。
「だ・か・ら!」
「そもそも、バレンタインデー前に男がチョコ売り場をうろついていたら、『こいつはモテないから、事前に用意して、あたかも貰ったように見せかけるつもりだ』って思われるだろ!」
「ヨシトくんって、毎年そんなことをしていたなんて……」
「するか!」
 かわいそうって思うなら、くれたらいいのに。
「貰えなかったら、貰えなかったで、お返ししなくていいし」
 決して、強がりで言っているわけではない。気が楽だってことです。
「そうか!」
 すると桃子さんは、制服のポケットを漁りだして何かを手渡してきた。
「何? この大いに溶けかかった一口チョコレートは?」
 触っただけで、元の形を失いつつある。まさか、普段からこれを常備しているのか。
「べ、別に、あなたのために、あげるんじゃないからね!」
「自分のためでしょ?」
 こんなのツンでもなければ、デレでもない。
「じゃあ、お返しはアメ玉一つ。ということで」
「女子からプレゼントを貰っておいて、それでいい訳がない」
「そうなんですか……?」
「もらったら、あげ返す。倍返しだ!」
「その満足げな顔はなんだ!」
 教科書通りのドヤ顔を見せつけられた。
「十倍返しでも、いいのよ」
「黙れ!」